NBAで3度のMVPも、パリ五輪のメダルで「ようやく真価が認められた」。“側近”コーチが語るヨキッチのセルビアでの評価<DUNKSHOOT>
昨シーズン、NBAで3度目のシーズンMVPを受賞したニコラ・ヨキッチについて、その実力を疑うバスケファンはもはや存在しないだろう。 【動画】ヨキッチが大一番でトリプルダブル!パリ五輪3位決定戦&準々決勝ハイライト そんな彼について「ようやく真価が認められた」と語るのは、ほかでもない、ヨキッチと最も近い場所にいるといっても過言ではないデンバー・ナゲッツのアシスタントコーチ、オグニェン・ストヤコビッチだ。 ヨキッチと同胞のセルビア人であり、この夏のパリ五輪ではセルビア代表のコーチングスタッフにも加わっていたストヤコビッチは、母国のスポーツ紙『Meridian Sport』のインタビューで、「セルビアの国民は、ニコラがどれほど素晴らしいバスケットボール選手であるか、彼がどれほど秀でているかをこれまで知らなかったのだということを実感した」と語っている。 ストヤコビッチいわく、一般的にセルビア国民は、代表チームで結果を出してこそ、その選手の真の実力を認めるという。実際、同国の記者たちからも「セルビアでは代表でいかに活躍するかが大事」ということを何度も聞いたことがある。 セルビア代表は2016年のリオ五輪でも銀メダルを獲得している。当時21歳だったヨキッチもメンバーの1人として平均9.1点、チームトップの6.0リバウンドと立派な数字をあげてはいたが、チームの支柱は一時NBAにも在籍したセンターのミロスラフ・ラドゥリサや司令塔のミロシュ・テオドシッチ、そして欧州でメキメキと頭角を現わしていた若きボグダン・ボグダノビッチだった。 しかし今回のオリンピックを経て、「人々は今になってようやく、彼(ヨキッチ)がどれほど素晴らしい選手であるかを認識し始めた」とストヤコビッチは語っている。 今回のオリンピックでは、24点ビハインドをひっくり返してオーバータイムの末にオーストラリアを下した準々決勝、アメリカ代表ドリームチームを瀬戸際まで追い込んだ準決勝、そしてトリプルダブルを記録した3位決定戦のドイツ戦と、ヨキッチの勝負どころでの影響力は絶大だった。 ヨキッチが2015年にナゲッツに入団する前からビデオコーディネーターとして同球団に在籍していたストヤコビッチは、NBAでの成長を支えてきた人物でもあるが、今回のオリンピックでの重要な役割は、いかにヨキッチをチームに順応させるか。それと同時に、いかにチームメイトをヨキッチのプレーに順応させるか、ということだった。しかしそれは、決して楽な作業ではなかったようだ。 「見る側の人たちは『ヨキッチとプレーするのはきっと簡単だろう』と言うが、そういう人たちはヨキッチとプレーするのがどれほど難しいかを知らないのだ。 彼は規格外のプレーをする選手だから、一緒にプレーしにくいと感じる選手もいる。その上で誰もがそれに適応し、自らを変え、それでいて自分自身を失わずにいなくてはならない」 クリエイティブな選手というのは、その創造性を共有できない者にとっては味方であっても予測がつかずにやりづらい、というのはチームスポーツにおける難しさのひとつだ。しかしその作業に成功した成果が、オリンピックでのメダル獲得につながった。 そして、2人がタッグを組んで挑んだこの夏の経験は、ナゲッツの新シーズンにも生かされる。SNSでは、オリンピックでチームUSAではなくセルビアを応援していたナゲッツファンの存在もクローズアップされていた。それほどヨキッチとストヤコビッチは、いまや球団の根幹となっている。 「この夏、多くの学びと経験を得た」と語る師弟コンビの進化に注目したい。 文●小川由紀子
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