睡眠を考える──「大谷翔平に学ぶ睡眠力。良い眠りは運動技能の向上を促す!」
大谷の睡眠と強靭なメンタルの関係
──大谷選手は「誘惑に負けず、意志が強い」ということでしょうか。 彼は目標達成の技術を持っています。花巻東高校時代の恩師・佐々木洋監督の教えで「目標達成シート」を作っていたことが知られていますが、「マンダラチャート」などを使って「世界一の選手になる」と決めている。そのために「今何をするべきなのか」という逆算が出来る人なので、現状の自分に必要なことや、優先すべきことが判断出来るのです。睡眠時間の確保もその一環でしょう。その技術を高校時代に監督から教わっているのが、彼の最大の資産なんじゃないかなと思います。 ──スポーツ選手だけではなく、一般の人にも同じことがいえそうです。 ビジネスマンにもまったく同じことがいえます。ですので、大谷選手が学んだスキルはビジネスシーンの研修でも人気です。ただ、大谷選手は睡眠時間を10時間以上確保しているといわれていますが、一般の人やスポーツ少年たちが真似をしても、大谷選手のようにはなれません。あれは大谷選手の「勝ちパターン」であって、普段8時間寝ればOKの人が10時間寝ようと努力してしまうと、睡眠の質が2時間分薄まって、全体の睡眠クオリティやパフォーマンスまでも下がってしまう。眠れないことに悩むようになると、今度はサプリメントや薬などにどんどん投資していくようになって、これらに頼らないと結果的に眠れないという状態を作り出してしまう。僕はそれを懸念しています。サプリメントや薬に頼らないと寝られないということは、経済的な負担もありますし、依存することで不安な気持ちにもなってしまいますので。 ──「勝ちパターン」は人によって違うんですね。 大谷選手は10時間以上寝ることで最大限のパフォーマンスを発揮できる。長い時間をかけて自分で見つけた大谷選手のパターンです。でも、生活リズムは人それぞれ異なるので、「自分なりの勝ちパターンがある」ということを彼から学ぶことが一番大事だと思います。 ──大谷選手の強靭なメンタルも、睡眠が関係しているのでしょうか。 睡眠の重要な働きに「記憶の固定」があり、日中に覚えたことを忘れないように脳に定着させたり、深い睡眠には嫌な記憶を消去してくれることもわかっています。たとえば、ミスをした、怒られた、負けたといった嫌な記憶は反省して次に生かしていかないといけないと思いますが、しっかり深い睡眠をとれていないと嫌な記憶が残り、メンタルが弱い選手になってしまうんです。「昨日先輩にパスミスして怒られたから、今日は置きにいくパスを出してしまう」といった具合で、それで「遅い!」と怒られる。深い睡眠がとれていないと、そういうことが起こりますね。