50年以上実現せず「奥羽新幹線・羽越新幹線」の今 「本当に必要としているのは山形県だけ」のワケ
・ANA 羽田空港~庄内空港……1便あたり166席×10本(5往復)=1660席 ・高速バス 酒田・鶴岡~東京(夜行便)……1台あたり30席×6本(3往復)=180席 これらに合計すると1日8000人弱となるが、利用率を60%前後と考えても利用者数は1日5000人程度。羽越新幹線を実現するためには、あまりにも小さな市場である。 ■フル規格建設で失われるミニ新幹線のメリット 奥羽新幹線は福島~新庄間ではミニ新幹線の山形新幹線として運行されており、これをフル規格に置き換え、さらに新庄駅から秋田駅への延伸となるが、新庄駅から先の区間はほとんどが秋田県内となり、先程も触れたように、秋田県が前向きに取り組むとは考えづらい。
そして、山形新幹線をフル規格の奥羽新幹線に置き換えた場合、山形新幹線停車駅である高畠駅、かみのやま温泉駅、天童駅、村山駅、大石田駅には奥羽新幹線の駅が設置されない公算が高い。 これらの駅がある自治体は、首都圏とのダイレクトアクセスを失うことになり、大幅な利便性低下が予想される。また、ミニ新幹線とはいえ、「新幹線停車駅」の看板を失うことは、自治体としての存在価値にも関わることであり、簡単に容認できることではない。
東京~山形の旅客流動では、現状でも山形新幹線がシェア98%と圧倒しており、十分機能している。さらに、山形新幹線でも板谷峠での防災、高速化をはかる米沢トンネル(仮称)建設が計画されており、これが実現すれば、東京~山形で約10分の短縮と、フル規格にせずとも高速化が図れるのである。 このように、現時点では奥羽新幹線、羽越新幹線の必要性は極めて乏しいといえる。 これらの新幹線の建設の可能性があるとすれば、国が物流の安定化、冗長性を向上するため、貨物新幹線の実現に向けて動き出す……そのくらいの国家的なプロジェクトが必要であろう。
鐵坊主 :鉄道解説系YouTuber 鉄道アナリスト