AI活用は今からでも「全然間に合う」?2027年「意外な未来」をガートナーが予測
「大外れ」したある予測とは
一方、仮説が大きく外れた例もある。「2024年までに組織の60%が分散型(権限を現場に委譲する)デリバリ・モデルを採用し、D&A(Data and Analytics)のオペレーションコストが非採用企業の1/5に削減される」という予測だ。 堀内氏が「極めて斬新な仮説」と表現するこの仮説だが、結果は改めて説明するまでもないだろう。だが、予測が外れた一方で、レポート内には今に通じる記述も少なくないという。 たとえば、仮説の根拠には人やコストの制約から、ビジネス部門の全プロジェクトに常に十分なITリソースを投入できないことや、世界的にはデータ分析に向けCoE(Center of Excellence)の設置が一般的なのに対し、日本企業では約50%にとどまる半面、うち50%以上にAI活用などについて現場とアイデアを出し合う実践コミュニティがあることが示されている。 このSPAにおける推奨事項は、企業全体に点在する(D&Aの)分散チームと集中チームによる2層の組織モデルの構築と、実践コミュニティの組織の2つである。 「現場の多様なニーズに基づくD&Aは中央集権型の体制では対応しきれないことを受け、フランチャイズモデルによる現場でのD&Aが現状、グローバルで広がっています。そこでの実践コミュニティの組織は、多くの人材、つまり知見を得る上で極めて効果的です」(堀内氏) 世界的なデータ管理の厳格化の中、データの国外への持ち出しを禁ずる動きが広がっており、すでに75%の国が何らかのルールを整備。そのことが中央集権型のD&Aの足かせとなっている。 「フランチャイズモデルはそこでの打開策に位置付けられます。リソース割り当ての最適化により、各国固有ニーズにもより適切な対応が可能になります。」(堀内氏)
10%の「上澄み」になるのに何が必要?
では、これから迎える未来については、どんなSPAが公表されているのだろうか。 堀内氏が紹介するのは、「2027年までに日本企業の10%は、データに基づく業務上の意思決定の自動化に成功し、労働生産性を20%向上させる」という予測だ。 このSPAにおける主要な所見では、AIの進化と最新技術によるツールの機能強化を通じた、情報収集や分析の効率化と、その一方での、特定業務以外でのAIによる業務改善例の現状における乏しさが指摘されており、その中にあって、AI活用に意欲的な企業の一部では、データの取捨選択や蓄積などの成熟度が着実に高まり続けているとしている。 そうした状況を受け、市場への影響として導き出されたのが、「AIが間違った判断を示した際に被る損害が小さい、あるいは、迅速性が最重視される意思決定でAIの利用と成熟度が加速する」である。 「活用領域は現状、まだまだ狭いものの、成熟度の高まりから20%の労働生産性向上はまず妥当でしょう。AIは間違うこともあり、品質よりもスピードを重視する企業で特に活用が加速するはずです。10%に勝ち残るため、従業員のデータ/AIリテラシーの獲得に向けた投資に力を入れるべきです」(堀内氏)