長崎日大・川副良太 病の危機乗り越え、充実の73球 選抜高校野球
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高校野球連盟主催)第2日の20日、23年ぶりにセンバツに出場した長崎日大は近江(滋賀)に延長十三回、タイブレークの末に敗れた。29年ぶりのセンバツ勝利はならなかったが、10カ月前、感染症にかかって命の危険さえあった川副良太投手(3年)がリリーフで登板。夢のマウンドで奮闘した。 【今大会のホームラン 第1号を放ったのは…】 九回、先発の種村隼投手(3年)の後を受けて登板。身長163センチと上背はないが、力のある速球と大きなカーブで近江打線に立ち向かった。最後に力尽きたものの、十~十二回はぴしゃり。一時の容体を考えれば目を見張る投球だった。 異変に襲われたのは2021年5月。当時の新2年生ではただ一人、ベンチ入りを果たした頃だった。腹痛が治まらず、それでもチャンスを逃すまいと練習を続けたが、徐々に痛みは増した。最初に受診した病院では便秘と診断され、薬を処方されたが改善しない。他の病院に行くと実家がある佐賀県の大きな病院を紹介され、緊急入院することに。虫垂炎が悪化して盲腸が破裂していた。「もう少しで命も危なかった」と医師から告げられた。 2度の手術を経て体重は9キロ近く減った。投球に必要な筋肉もそげ落ちた。それでも病院食の量を増やしてもらって体重を戻し、リハビリに取り組んだ。心の支えは両親から贈られたグラブ。本当はサプライズでプレゼントしてくれるつもりだったらしいが、「僕の方が突然の入院で驚かせてしまった」。復帰したら使おうと心待ちにした。 3カ月後の21年8月に復帰。夏の大会を棒に振ったが「入院生活で練習できなかった間、自分の投球を見つめ直すことができた」。秋の長崎県大会、九州大会は全8試合中7試合に登板。種村投手との二枚看板で九州4強に勝ち上がった。 甲子園でも持ち味は出せたが、試合後、川副投手は責任を背負い込んだ。「自分が抑えなきゃいけない場面で抑えられなかった。夏までにしっかり実力をつけて、またこのマウンドに戻ってきたい」。悔しい敗退にはなったが、充実の73球だった。【長岡健太郎、浅野翔太郎】 ◇全31試合をライブ中継 公式サイト「センバツLIVE!」(https://mainichi.jp/koshien/senbatsu/2022)では大会期間中、全31試合を動画中継します。また、「スポーツナビ」(https://baseball.yahoo.co.jp/hsb_spring/)でも展開します。