永谷園の「お茶づけ海苔」、じつはいま「夏に需要が伸びまくっている」…その意外な理由
「この味は真似ができない」と言われる
発売から72年。干支が今年で6周しますが、実は味はほとんど変わっていません。出汁を昆布ベースにしたのは、お茶に合うから。あと使っているのは抹茶、塩、砂糖など、本当にシンプルなんです。 でも、この味は真似ができないと言われます。これは原料の吟味が大きいです。海苔は自社で入札しますし、昆布は常に旨みやとろみなどを厳密にチェックしています。 そのすべてがミックスされ、社内でも黄金比と呼ばれる整った味が作られています。これが、クセになるんです。 新メニュー「さけ茶づけ」を発売したのは、「お茶づけ海苔」発売からずいぶん経った'70年でした。商品化は難航しましたが、大きく寄与したのがフリーズドライ技術でした。鮭を熱風で乾燥すると香り・味・色が悪くなる。食感も硬くなり湯戻りしない。それがフリーズドライ採用により、食卓の焼鮭とかわらないおいしさを再現できました。その後、「梅干」「たらこ」「わさび」が仲間入りしました。 お米を美味しく食べることは、日本人の原点なのでは、と思います。今は食べるものもいろいろありますが、それでもお茶づけを食べたくなるときがある。食べるとホッとして、自分に戻れるような気がする。そういうことができる食べ物なんだな、と感じています。 やっぱりご飯って、日本人にとって本当に大切なものですよね。 「お茶づけ海苔」利用者は、子どもの頃から食べている方が多いです。昔から食べ慣れた味を体が覚えているのではないかと思います。久しぶりに食べると、皆さん「そう、この味!」とおっしゃいます。 だから、自分が家族を持つと、子どもにまた食べさせたいと考える。そういう流れができているのだと思います。 私は新卒で入社して、みそ汁や惣菜の素などの開発を経て、4年前からお茶づけ海苔を担当しています。ちょうど娘が小学校に上がるタイミングで、学校の説明会で言われたのが、「ちゃんと朝は食べさせてください」でした。これが、親にはプレッシャーなんですね。