センバツ高校野球 聖光学院、4年ぶり校歌 集中打で9点圧倒 /福島
第94回選抜高校野球大会(毎日新聞社、日本高野連主催)は大会第2日の20日、4年ぶり6回目出場の聖光学院は、春夏通じて初対戦となった二松学舎大付(東京)に9―3で勝利し、2018年春以来の甲子園白星。16日夜の地震に見舞われた県民らの応援に、勝利で応えた。聖光学院は初回から連打などで3点を先制し、五回には打者11人の猛攻で一挙6点を奪い、勝負を決めた。聖光学院は第7日(25日予定)、第1試合での2回戦で、近江(滋賀)と対戦する。【玉城達郎】 聖光学院は初回、制球の定まらない相手先発の布施東海(3年)を攻め立て、四番の山浅龍之介(同)の右前適時打で先制。五番の安田淳平(同)も中前適時打を放つなど、3点を先取した。 試合が大きく動いたのは五回。安田の内野安打を皮切りに相手の失策や四球などで1死満塁。このチャンスに先発の佐山未来(同)が左翼線に2点適時二塁打を放ち、自らのバットで流れを引き寄せる。変わった二番手・辻から赤堀颯(同)が2点中前適時打を放つと、三好元気(2年)が右中間を破る三塁打、山浅が中前に連続適時打でたたみかける。この回に一挙に6点を奪い、突き放した。 大量得点にわくアルプススタンドでは、この日応援団長に任命された斎藤篤志(3年)が「スタメン、ベンチ、スタンドが一体となってチーム全員で戦うことをテーマにしてやってきたので、選手の後押しになっていると信じてエールを送り続けます」。コロナで声が出せない中、メガホンをめいっぱいたたいて鼓舞していた。 エース佐山はこの冬に磨きをかけてきた直球を軸に多彩な変化球で相手打線を翻弄(ほんろう)。四、六、七回に連打でピンチを迎えたが、いずれも最少失点に抑えて切り抜けた。 守備陣もイレギュラーバウンドの打球を手堅く処理するなど、堅い守りで佐山をもり立てた。佐山は八、九回の終盤にギアを上げ、いずれも3者凡退に切って取った。終わってみれば、わずか93球で九回を投げきり、被安打7、6奪三振2四球と安定感を見せつけた。 「打撃力の向上」を掲げて冬のトレーニングに励んできた聖光ナインは、蓋(ふた)を開ければ10安打と成果を発揮し、次につながるゲームとなった。 ◇800人の応援団声援 三塁側アルプススタンドには約800人の大応援団が駆けつけ、聖光学院ナインに熱い声援を送っていた。 主将の赤堀颯(はやと)(3年)が中学時代に所属していたオール枚方ボーイズ(大阪)の選手たちも、先輩のプレーを目に焼き付けた。聖光学院に進学が決まっている中学3年の勝野俊介さん(15)は「(赤堀は)後輩のことをよく気にかけてくれる面倒見の良い先輩。(五回の適時打を見て)自分も大舞台であのようなプレーがしたい。かっこよかったです」と目を輝かせた。 また、聖光学院の吹奏楽部は少人数のうえコロナ禍で練習できなかったため、兵庫・尼崎市立尼崎高校ブラスバンド部の協力を得て収録した音源を流した。 ……………………………………………………………………………………………………… ■ズーム ◇成長した姿、見せた 聖光学院・佐山未来投手(3年) 「甲子園は見に来る場所じゃなくて立つ場所――」。栃木・宇都宮学園(現・文星芸大付)2年時の1995年夏に甲子園出場を果たした父正和さん(43)の教えだ。 東京神宮リトルシニア所属の中学3年時、チームでセンバツ大会を観戦する機会があったが父の教えを守り、参加を断った。 憧れの場所にようやく立てた。大会前には「両親は新型コロナ禍で練習試合も見に来ることができていないので、甲子園では『ふた回り』成長した姿を見せたい」と、意気込んで臨んだマウンドだ。 冬の間は直球の質を高めることに注力してきた。コーチ陣からの教えを受け、遠投などで体を大きく使うことを意識し、それによってボールにうまく力が伝わるようにした。その成果で直球の伸びが増し、相手打線に流れを渡さなかった。 親子の念願がかないアルプススタンドで声援を送った正和さんは「よくやってくれた。最後は楽しんで投げていた」と、大きく成長した息子の姿に目を細めた。【玉城達郎】