ペットボトル3本が1本の傘に生まれ変わる 気候変動を肌で感じた傘メーカーの挑戦
バイオマスビニールやコーヒーかすの再利用も
――他のリサイクル素材の開発にもチャレンジしていらっしゃいますね。 「リペット」シリーズの次に開発したのが、2023年2月に販売を開始した「エコクリア」シリーズです。これは、サトウキビを原料にしたバイオマスビニールと、先に開発した「リペット」の素材を使用した製品です。この素材を使った傘は、従来のビニール傘に比べて環境負荷が少なく、使い捨てではないビニール傘として非常に好評を得ています。 さらに、2024年2月に販売を開始した晴雨兼用傘「ノーアンブレラ」シリーズでは、リサイクルペットボトルの原料にコーヒー豆の搾りかすを混ぜて作った再生素材を使用しています。コーヒー豆の搾りかすからできたナノパウダーには紫外線を遮断(しゃだん)する効果があるとする研究もあり、この素材を使った傘は、紫外線遮蔽(しゃへい)率が高いという特徴があります。 福岡を拠点とするコーヒーショップ「NO COFFEE」とのコラボレーションにより、多くのショップから出るコーヒー豆の搾りかすを再利用することで、コーヒー豆の廃棄量の削減も目指しています。
製品を通じてサステナビリティを伝えたい
――社内の意識改革にも積極的に取り組んでいます。 ペットボトルの飲料をやめてウォーターサーバーを設置したり、ゴミ拾いイベントへ参加したりするなど、具体的な取り組みをおこなっています。会社全体でのゴミ拾いイベントでは、社員とその家族が一緒に参加し、ペットボトルなどのゴミを集めて洗浄するなどリサイクルの工程の大変さを体験しました。 また、社員教育にも力を入れており、社員には環境問題やリサイクルの重要性についての研修をおこなっています。こういった活動を通じて環境問題についての意識が社内で共有され、全社員がサステナビリティに取り組むことができるようになっています。 ――サステナブルな製品の開発を通じて実現したいことは何ですか。 リサイクル素材を使った製品はまだ、全体の売り上げに対する割合が決して高くはありません。しかし、これからも開発を進め、環境に配慮したビジネスを続けていくつもりです。製品を通じて、より多くの人々にサステナビリティの重要性を伝えたいからです。 一つの例として、デザインにひかれて購入した方が、その傘がサステナブルな素材で作られていることに後で気づくことがあります。例えば、あるお客様は「リペット」シリーズの傘を購入して、後に素材がリサイクルペットボトルであることを知り、とても驚いたそうです。お客様はその時「私も環境のために役立っているんだな」と感じたとのことでした。 こうした実例があると、私たちの取り組みが少しずつでも人々の意識を変えることができているのだと実感します。傘という製品を通じて、多くの人々に環境問題への関心を持ってもらい、日常生活の中で小さな変化を生み出すきっかけを提供していければと思っています。
朝日新聞社