箱根駅伝Stories/仲間思いの帝京大キャプテン西脇翔太「“個人目標=チーム目標”と思ってやってきた」
自身もチームも仕上がり上々
10月の箱根駅伝予選会では、「本当はフリーでどんどん勝負してタイムを稼ぎたかった」と言うように、本来であれば、上位でレースを進めてチームに貯金をもたらすことが自身の役割だと考えていた。 しかし、9月にチーム内に新型コロナウイルスが蔓延し、西脇自身も罹患したこともあって、副主将の日高拓夢(4年)とともに集団走の牽引役を務めることになった。 「僕らは後半に絶対に(順位を)上げられるとわかっていた」 西脇は冷静に日高と交互に集団を引っ張り、思惑通りに後半に順位を上げ、無事に箱根路への切符をつかんだ。タイムを稼ぐ役割ではなくても、西脇と日高の貢献度は高かった。 新型コロナ罹患から予選会には間に合わせたものの、その反動も大きかった。全日本大学駅伝で4区を任された西脇は、脱水症状に陥るアクシデントに見舞われたのだ。なんとかタスキをつないだものの、7つ順位を落とし、チームは12位でレースを終えた。 「西脇さんは、チームのことを思って行動してくれている。自分たちは普段の西脇さんの行動、態度を見てきているので、西脇さんが外してしまっても、誰も責められない」 全日本の1区を走った福田翔(3年)はこんな言葉で西脇をかばった。これも彼の人望の厚さの現れだ。 全日本の後は、他の主力選手が記録会やハーフマラソンに出場するなか、西脇は回復に努めた。そして、12月上旬の伊豆大島での選抜合宿を経て、無事に16人のエントリーメンバーに名を連ねた。 「まだ100%やり切れていない状態で大島合宿に挑んだので、結構苦しむだろうと考えていたのですが、パーフェクトに練習ができました。距離走は余裕を持ってこなせたし、インターバル系の練習も、少し心肺はきつかったんですけど、しっかりこなせました」 調子は上々。箱根には万全な状態で臨めそうだ。 頼もしい仲間の復活もあった。下級生の頃からともに主力選手として活躍してきた小野隆一朗(4年)だ。夏から不調が続いていた小野は、箱根予選会も全日本も不出場。大島合宿にも参加せずに、12月上旬の日体大長距離競技会に臨んだ。そして、10000mで自己記録を更新(28分36秒68)。復活を強くアピールした。 「LINEのビデオ通話を使って小野のレースをみんなで応援していました。走り終えた小野が『箱根は任せろ。お前らは合宿頑張れ』とメッセージをくれました。『そんなこと言っていないで、お前も合宿来いよ!』と内心では思ったのですが(笑)」 ともに戦ってきた仲間の復活を、西脇は心から喜んだ。 足りなかったピースがようやくそろい、チームの雰囲気も良い。何より西脇自身の表情が明るい。 「箱根ではおもしろいレースができるように頑張ります」 そう宣言する西脇の声には自信がみなぎっていた。 にしわき・しょうた/2001年4月27日生まれ。愛知県名古屋市出身。愛知・冨士中→名経大高蔵高。5000m13分56秒71、10000m28分38秒43、ハーフ1時間2分25秒
和田悟志/月刊陸上競技