駒木根葵汰が語る、自身の強み「自分が生きづらいと思っている部分がこの職業ではプラスに繋がっている」
俳優・駒木根葵汰の出演作が、12月18日(水)19:00より日本映画専門チャンネルにて2ヶ月連続で特集放送される。駒木根は、「機界戦隊ゼンカイジャー」(2021年)で主人公の五色田介人役を演じ、「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」(2022年)でも続投を果たしたことで、一気にお茶の間に浸透。その後、さまざまなジャンルの役柄を演じ続けている今、俳優として着々とスターダムにのし上がっている。 【写真8枚】駒木根葵汰の“眩しすぎる”笑顔 このたび「2ヶ月連続 駒木根葵汰が眩しくて」と銘打って特集放送されるのは、駒木根の魅力溢れる出演作の中から4作品。駒木根の代名詞とも言える映画「機界戦隊ゼンカイジャーVSキラメイジャーVSセンパイジャー」(2022年)、美しい佇まいで視聴者を虜にした「25時、赤坂で」(2024年、テレビ東京系)や、「ゼンカイジャー」のメンバーが再集結し、朗読劇に初挑戦した「朗讀劇『極楽牢屋敷』」(2023年)、素の駒木根が詰まった旅番組「バックパッカー世界さすらいメシ」(2023年、BS-TBS)という、多彩なラインナップでお届け。 さらに、「25時、赤坂で」をはじめ出演作の撮影秘話、自身のキャリア、さらにはプライベートまで語り尽くす、撮り下ろしの特別番組「SPインタビュー 駒木根葵汰」も放送される。 WEBザテレビジョンでは、特別番組の収録を終えた直後、駒木根にインタビュー。今回の特集への思いや、特別番組を通しての新たな発見、芝居への熱い思いなどを語ってもらった。 ■「25時、赤坂で」の撮影秘話をはじめ、“眩しい”笑顔で答えるインタビュー特番 「SPインタビュー 駒木根葵汰」は、国内外で大反響を生み出した「25時、赤坂で」にまつわる秘話をはじめ今回特集される4作品についての想いを深掘りしていくインタビュー番組。 特に番組内で語った「25時、赤坂で」で印象に残ったシーンは作品ファン必見。新原泰佑演じる白崎由岐から迫られるも「役作りで」と言われ壁を感じてざわついた心境を表現する瞬間や、撮影クルー全員で作り上げたという台本にはなかった演出が観られる桜の木の下のシーンを挙げている。 苦しかった記憶、気恥ずかしい話題にもはにかみながらも真摯に、赤裸々に答えていく姿はまさに「眩しくて」という表現がぴったり。4作品を通して俳優・駒木根葵汰の歩みを追い、飾らず自然体の駒木根を映すドキュメンタリーのような番組に仕上がっている。 ■「自分のスタイルを固定しない」 ーー「SPインタビュー 駒木根葵汰」の収録を終えたばかりですが、改めて自身の出演作を振り返ってみて感じたことはありましたか? 大人になったなと思いました。「機界戦隊ゼンカイジャー」が終わってからあっという間に今日になっていたので、改めて振り返ってみたら、この約4年間ずっと前を向いて生きてきて、ちゃんと頑張ってきたんだなというのを今すごく感じますね。だから、たまには自分に何かご褒美をあげてもいいのかなと(笑)。 ーー今回の特集で放送される作品の他にも多様なジャンルの作品に出ていますよね。役の幅の広さに驚きます。周りからの反響も大きいのではないでしょうか? やっぱりうれしいですね。前に見てたこのドラマであの役を演じていたのは君だったの!?と言っていただけることも多くて。そう言っていただけたときは、やってやったぞ!って、ちょっと誇らしい気持ちになります。でも、実際のところあまり周りからの評価は気にしていなくて、自分自身がしっかりその役に向き合っていくことが大事で、それができればいいのかなとも思っています。 ーーじっくり役と向き合うとのことですが、役と役の切り替えはどうしているのでしょうか? 正直、あまり気にしたことがなくて。強いて言えば、こだわらないことですかね。たとえば、プライベートでは髪の毛を切りに行かなくて、仕事が決まったタイミングで髪の毛を切っているんですよ。 ーーその役に合わせて? そうです。僕はこの髪型にしかしませんという風に決めてしまうと、 役の幅も狭まるし、自分自身、こういう髪型にしたいなという気持ちもなくなる気がして。役がない期間はとりあえず髪も髭も伸ばせるだけ伸ばしっぱなしにしています。そうすると、たった一週間で自分はこんなに髭が伸びるんだ、だったらもう少し年上の役もできそうだな、みたいな気付きや、こんな自分にもなれるんだ、という新しい発見もあります。 だから、最近の作品で役により違う姿を見せられているのは、単純に見た目の変化が大きいこともあるのかなと思います。自分のスタイルを固定しないというか、普段の自分をニュートラルにして、どの方向にでもいけるようにしている分、いろいろな役に積極的にトライしたいなと。…ってこんなに語りましたが、単純に美容院が苦手っていうのもあるんですけどね(笑)。 ーー駒木根さんはモデルから俳優になりましたが、役者をやりたいと思ったきっかけはあったのでしょうか? 初めての映像作品がアベラヒデノブ監督の「LAPSE~失敗人間ヒトシジュニア~」(2019年)で、オーディションに初めて受かった作品だったんです。高校を卒業してすぐに芸能活動を始めたばかりで、でもZ世代からは支持もあって、少し浮かれていたんだと思います。そんな中で現場に行ってみたら、 本当に自分でもびっくりするぐらい、何もできなくて…。ただただ周りの人の芝居に圧倒されるだけでした。 ■「ちゃんと自分が納得できるお芝居をしたい」 ーー初めての芸能界での挫折だったのですね。 そのときに、ファンをはじめ皆さんに「僕、この作品に出ますよ」って恥ずかしくて言えないなと思ったんです。こんな姿を世間に見せたくないと思ったのがきっかけで、やるならちゃんと芝居をしようと。「僕は役者として自信を持ってこの作品に参加しています。だから観てください」って言いたいと思ったんですよね。それがきっかけでワークショップにも通うようになって、ちゃんと映画を観たり、本を読んだりもするようになりました。このデビュー作品が、僕にとっては本当に衝撃的で大きかったです。 ーーモデルから俳優へ。まさに「25時、赤坂で」で駒木根さんが演じた羽山麻水と重なりますが、キャリア以外でも似ている部分はあったのでしょうか? 今は、性格面でも落ち着きが出てきたので、近い部分はあるかもしれないです。ただキャリア面では羽山麻水は国民的なスターなので、僕はまだその前段階にいるなと。だから、数年後ぐらいに彼のようになれたらなと思っています(笑)。 ーー一方で「機界戦隊ゼンカイジャー」の五色田介人役は、元気ハツラツとした真逆のキャラクターのように感じました。 確かに、テンションの高い役でしたよね。でも、演じている当時はまだ20歳前後だったこともあり、自分も五色田介人に近い性格をしていたと思います。でも、「機界戦隊ゼンカイジャー」が終わり、役者として一つ大きな仕事をやり切った達成感もあってか、僕自身だいぶ落ち着いた気がしますね。 ーー五色田介人と共に成長したのですね。 あとは単純に大人になってきて、周りも変化していくし、いろんなことを考えるようにもなって。自分自身の今と未来とか、俳優としてのキャリアや単純にお芝居のこと、次の台本のこととか… 本当にいろんなところにアンテナを張らないといけなくなり、自分のことにすごく責任感が持てるようになったのかなと。地に足を着けていないといけない業種だと思っているので。 今、自分のいる場所を大切にしながら、自分は何ができて何ができないのか、 今の自分には何が必要なのかなど、自分を見失わないように“今の自分の地点”を日々考えながら生きるようになりました。 ーー駒木根さんにとって、ちょうど「機界戦隊ゼンカイジャー」が大人への切り替えの時期だったんですね。 そうですね。漠然とこのままじゃダメだなという想いが芽生えました。でも、それは「売れたい」という気持ちではなくて。ちゃんと自分が納得できるお芝居をしたいという気持ちが強くなったんですよね。 だから一つひとつの役にもっとしっかり向き合っていこうと決めました。 ■「初めて役が分からなくて、もがき苦しんだ」 ーー私生活でも変化はあったのでしょうか? 一人の時間が増えましたね。インドアになって、家で映画を見たり、本を読んだりする方が落ち着くようになりました。ちゃんとインプットしているという安心感もあります。最近、旅行とかに行くと、ちょっとドキドキしちゃうんですよ。帰ってきたときに芝居がなまっていないかなと不安になってしまって。 ーー少しワーカホリック気味のような気もしますが…。 そうですね。最初のときのできなかった自分が許せないというのが、多分今もずっとあるんだと思います。最近もありがたいことに、いろいろな作品に出演させていただいているので、まずは役者としての今を大事にしたいなと。僕に期待してくれている方たちに、ちゃんと役者として返せるような人にまずはなりたいので、どうしても休みたいけど休みたくないみたいな。ただよくない体質ではあると思うので、そこは少し直しつつ、一人の時間を満喫していきたいですね。 ーー駒木根さんの役者としての種となっているのはデビュー作ですが、それ以外に根となり幹となるようなターニングポイントになった作品はありますか? 「差出人は、誰ですか?」(2022年、TBS系)ですね。初めて役が分からなくて、もがき苦しんだ作品でした。僕が演じた御手洗健は、少し難しい役柄で、どういう気持ちなんだろう?と理解したくても、勝手に推測するのがおこがましいような気がして、プロデューサーの方に何度も相談させていただきました。今振り返ると、現場にいる時間以外もずっと苦しかったなと。初めて自分が分からなくなる感覚を抱いたので、とても印象に残っています。 ーー自分には全く“ない”役だったのですね。 そうですね。あとはやっぱり「機界戦隊ゼンカイジャー」は、とても自分の中で大きかった作品です。撮影自体も1年間という長期間で、こんなに長い時間を一つの作品と向き合えること自体があまりない経験だと思うので。そういった意味でも、すごく貴重な時間を過ごさせていただきました。初主演だったこともあり、そこで責任感が芽生えたり、現場での共演者やスタッフさんたちとのコミュニケーションの取り方や、いろいろな方から見られているという意識、座長としての立ち居振る舞いなど本当にいろいろなことを学ばせていただきました。それがあったからこそ、他の現場でも恥ずかしくない僕でいようという意識が持てているのではないかなと思います。 ーー「機界戦隊ゼンカイジャー」が駒木根さんの礎となったのですね。そんな「機界戦隊ゼンカイジャー」で声優さんたちとアフレコをしたことでだいぶ声の芝居が鍛えられたと番組内で言っていましたが、お芝居をする上で喋り方も意識しているのでしょうか? 喋り方は一番意識しているかもしれません。スーパー戦隊をやると、作品として求められることもあり、どうしても芝居が大きくなってしまうんです。ただ、1年間という長い期間そのお芝居をやっていると、どうしても染みついてしまうので、終わった後はとにかく抜く作業を徹底してやっていました。意識してボソボソ喋るようにすることから始めて、そこからリアルな喋り方に仕上げていくみたいな作業です。だから、人一倍リアルな喋り方を勉強したと思います。自分や他の人がどういうときにどういう喋り方をしているのか、めちゃくちゃ研究しましたね。本来の自分がどう喋っていたのか、正直もう分からなくなっちゃいました(笑)。 ■「役自身はもちろん、僕自身も知ろうと思う」 ーー「25時、赤坂で」の羽山麻水役は、真逆の喋り方で透明感あるお芝居でしたね。 羽山麻水は、大人っぽくて独特な雰囲気がある人物だったので、トーンを落として、優しくゆっくり喋った方が彼らしいなと思い、そこを意識していました。 聞き返されてもいいぐらいのやんわりしっとり伝えるぐらいのテンション感でやっていましたね。感情を表に出さない役なので、抑え方が難しかったのですが、その分やりがいがあって、すごく楽しかったです。少ない情報で伝える、紙一重みたいな繊細な作業が僕は大好きなので、それが見ている方々に伝わったときの快感というか、答え合わせみたいな瞬間がすごくうれしくて…お芝居はやっぱり大変ですけど、そういうところが楽しいですね。 ーーお話を聞いていると、とても細かく深いところまで分析されているなと感じたのですが、どうやって役にアプローチしているのでしょうか? たくさん台本を読んでいろいろな想像をしています。まず自分の中でそのシーンの現場を想像する。たとえばカフェの撮影だったら、どんなカフェだろうというところから想像して、それならこういう芝居ができるかなとか、手札を増やしておく感じですかね。あとは、内面的な芝居だったら、一度どん底まで自分を落として、そこから上がっていくときの感覚を記憶する感じです。毎回、役作りのタイミングで役自身はもちろんなのですが、僕自身のことも知ろうと思うんですよね。近しいものだったり、全く持っていないものだったり、それを認識して役にすり合わせていくことが多い気がします。その過程で僕ってこんなところがあるんだと、自分に対して初めて気づくことも多いです。 ーー今回、駒木根さんの魅力を伝える特集放送ですが、自身の魅力はどこだと自己分析しますか? 地に足を着けていようと、現実を見ているところですかね(笑)。自分をきちんとよく見せたいとは思っているので、それには妥協しないで仕事をやり遂げないといけない気がしています。自分が生きづらいと思っている部分が、この職業ではプラスに繋がっていると思うので、僕としてはこれしかないんじゃないかというぐらい、本当にしっくりきている仕事です。これからもいろいろな表現をして、たくさんの方たちの人生に何かしらを与えられたらいいなと思いますし、見てくれている方が苦しい時期には寄り添えるような、そんな芝居をしていきたいです。 ーーでは、最後に日本映画専門チャンネルの特集ラインナップの作品で、駒木根さん視点での見どころを教えてください。 全て楽しんでいただきたいですが、特に「機界戦隊ゼンカイジャー」は、子どもができたら絶対に見せようと思っていて、それぐらい僕の代表作です。そして、これから役者として生きていく中で、ずっと付いてくる作品でもあると思っています。子ども向けの作品ではあるのですが、内容自体すごくポジティブで面白い作品なので、どんな方でもきっと気軽に楽しく見ていただけます。もちろんお子さんと一緒に見ても楽しめますので、 気に入っていただけたらうれしいです。「バックパッカー世界さすらいメシ」はもう完全に普段の自分が出ている旅なので、プライベートを覗かれている気がして、少し恥ずかしい気持ちもあります(笑)。その分いろんな僕を見せられるのではないかなと。そしてまた、俳優・駒木根葵汰により興味を持っていただけたらうれしいです。 構成・取材・文=戸塚安友奈