メガテン&ペルソナの粋を巧みに取り込んだ渾身の一作 『メタファー:リファンタジオ』試遊レポート
9月26日から9月29日までの4日間の日程で、『東京ゲームショウ2024』(以下、『TGS2024』)が開催された。 【写真】TGSで体験できた『メタファー』試遊の様子 リアルサウンドテックでは、セガ/アトラスブースへと潜入。展示されたさまざまなタイトルのなかから、『メタファー:リファンタジオ』(以下、『メタファー』)の試遊へと挑戦した。 「真・女神転生」シリーズや「ペルソナ」シリーズで知られるセガ/アトラスの完全新作RPGとして、発表時から注目を浴びてきた『メタファー』。はたして同タイトルはどのような仕上がりとなっているのだろうか。本稿では、その試遊レポートをお届けする。 ■「メガテン」「ペルソナ」の文脈に連なる完全新作のファンタジーRPG 『メタファー』は、アトラスが開発/発売を手掛ける完全新作のファンタジーRPGだ。舞台となるのは、8つの種族と3つの国が魔法の恵に抱かれる大地「ユークロニア連合王国」。統治者である王が暗殺され、不安と混迷のなかにある同国では、歴史上前例のない王位争奪戦がはじまっていた。本来であれば、跡を継ぐはずの王子は、ある事件以降、死の呪いに苦しんでいる。被差別種族のエルダ族として生まれた、王子の親友である主人公はその呪いを解くため、相棒の妖精・ガリカとともに旅に出る。プレイヤーは彼らの目線から、王国中を騒がす後継争いの行方と、種族をまたぐ絆の物語を見つめていく。 『ペルソナ3』『ペルソナ4』『ペルソナ5』のメインクリエイターたちが携わる期待の新作として話題となってきた『メタファー』。発売日は、まもなくの2024年10月11日となっており、『TGS2024』開幕直前の9月25日には、無料体験版の配信もスタートした。このデモでは、物語の導入部をまるごとプレイでき、セーブデータは製品版へと引き継げる。これまでアトラスフェス、試遊体験会と、時間や場所を限定して一般公開されてきた同タイトルのインプレッションだが、ようやくそうした制限なく、すべてのプレイヤーへと門戸が開放された格好だ。 今回、『TGS2024』で試遊できたのは、アトラスフェス/試遊体験会でも用意されていた「DUNGEON MODE:占拠された大聖堂」「BOSS CHALLENGE MODE:大海獣・強襲」に、新たなモード「JOURNEY MODE:海洋都市での遠征」を加えた3モード。うち、「DUNGEON MODE:占拠された大聖堂」で可能な体験は、直前に配信されたデモの最終盤と重なっていたため、私は「BOSS CHALLENGE MODE:大海獣・強襲」「JOURNEY MODE:海洋都市での遠征」へと挑戦した。 ■手に汗握るボスバトルに時間を忘れて没頭した「BOSS CHALLENGE MODE:大海獣・強襲」 「BOSS CHALLENGE MODE:大海獣・強襲」では、「大海獣ホモ・サバラ」とのバトルを体験できた。説明によると、このボスモンスターは物語中盤に現れるのだという。試遊できる3つのモードのなかでは、「RANK3」という最大の難易度に設定されていた。 『メタファー』には、「鎧戦車(がいせんしゃ)」と呼ばれる水陸両用の移動拠点が登場する。同モードの舞台となっているのは、海上を移動する鎧戦車の上だ。車中はキャンピングカーのようなつくりとなっており、ここではパーティーメンバーと会話したり、サブイベントを見たりすることができる。プレイ開始直後は、ボス戦がこれから始まるという雰囲気がまったくなく、どちらかと言えば、主人公たちの休息のひとときといった感じだった。 しかし、そのような穏やかな時間も束の間。鎧戦車は謎の生物の攻撃を受けることになる。準備を整え、甲板に出ると、大海獣ホモ・サバラが待ち構えており、主人公たちは否応なく、バトルへと巻き込まれていく。 物語の中盤に巻き起こるイベントということもあり、パーティーには、主人公のほか、ストロールやヒュルケンベルグ、ハイザメ、ジュナといった仲間キャラクターたちも加入していた。本来であれば、敵のタイプや弱点によってメンバーを入れ替えたいところだが、『TGS2024』における試遊では時間も限られているため、デフォルトの主人公、ストロール、ヒュルケンベルグ、ハイザメの4人で臨むことにした。 シンボルエンカウント方式を採用している『メタファー』には、「ファスト」と「スクワッド」という2つのバトルモードがある。ダンジョンを探索する画面のままで敵と戦える前者では、主人公の能力やアーキタイプ(「ペルソナ」シリーズでいうペルソナのようなもの)に応じて一定数の攻撃を行うことで、そのまま敵を撃破したり、大幅にアドバンテージを獲得した状態でコマンドバトルへと移行することができる。一方の後者では、RPGと聞いて誰もが想像するコマンドバトルが展開されていく。 イベントの一部となっており、エンカウントの概念がないボス戦においては、「ファスト」が用意されておらず、例外なく「スクワッド」でバトルがスタートする。大海獣ホモ・サバラとの戦いも同様。開幕直後には、試遊であることを考慮したと思われる専用のチュートリアルが挿入されていた。『メタファー』では、□で装備中の武器による攻撃、△でMPを消費するスキルによる攻撃など、ワンボタンで行動を決めていくことになる(※)。 ※試遊はPlayStation 5で行った。 大海獣ホモ・サバラは頭足類のようなモンスターで、本体と足4本の編成で登場する。足を使って攻撃してくるため、その数を減らしたいところだが、足は倒しても一定時間が経過すると復活する。攻略には本体と4本の足にバランスよくダメージを与えていくことが肝要となる。 下の画像を見てのとおり、少し油断すると、味方キャラクターのHPは簡単に削られてしまう。さすがはRANK3の難易度を持つモードといったところ。RPG慣れしていないプレイヤーのなかには、全滅してしまったという方もいたのではないだろうか。 画面上部にある緑色の結晶は、パーティーメンバーが行動できる回数を表している。「真・女神転生」シリーズなどをプレイした方にはおなじみの、「プレスターン」と呼ばれるバトルシステムだ。アイコンは味方のターンが回ってくるたびにパーティーメンバーの数だけ与えられ、1人が行動すると、1つ失われる。基本的には全員が行動すると、すべてのアイコンが消費され、自動的にターンが終了。敵の攻撃が始まるというシステムになっている。 その一方で、敵の弱点を突いたり、攻撃が偶然にもクリティカルヒットしたりすると、本来であれば失われるはずのアイコンが点滅状態となり、1つ分の消費で次のキャラクターも行動できるようになる。この仕組みをうまく活用し、有利な盤面を作っていくことが、「真・女神転生」シリーズ同様、『メタファー』でも勝利への近道となっている。 また、『メタファー』には、「ジンテーゼ」と呼ばれる、味方キャラクターによる協力技のようなものがある。「コストパフォーマンスに優れる大技」的な位置づけだが、その分、MPやプレスターンアイコンを多く消費してしまうため、使いどころには注意が必要だ。 私は「真・女神転生」シリーズのプレイ経験があったこともあり、ジンテーゼも駆使しながら、なんとかボスの打倒に成功。『TGS2024』の試遊台という舞台で、まさかの熱いバトルを展開してしまった。 ■アドベンチャー部分を余すところなく楽しめた新モード「JOURNEY MODE:海洋都市での遠征」 他方、「JOURNEY MODE:海洋都市での遠征」には、鎧戦車に乗り込み、ワールドマップに点在する拠点や野営地、ダンジョンを巡っていく、主人公たちの旅路が描かれていた。次の行き先を決めるため、車内・作戦室にある「円卓」で会議を行うパーティーメンバーたち。目的地は「イヌンド村」や「湿地帯の野営地」「嘆きの墓」「グラシア密林」といった候補のなかから、自由に選ぶことができた。 鎧戦車での移動には、距離に応じた日数が必要となる。『メタファー』には時間の概念が存在するため、プレイヤーはいま何をすべきかを考えながら、自身の行動を決めていかなければならない。こうした要素は「ペルソナ」シリーズにも含まれているが、こちらには移動に時間を使うという仕様がない。そのため、『メタファー』においてはより一層、取捨選択に迫られる場面が増えていくのかもしれない。 鎧戦車の操縦は、乗組員のニューラスが自動で行ってくれる。その間、プレイヤーは仲間キャラクターたちとの親睦に時間を使うことができる。私は円卓に残っていたストロールに話しかけ、彼とともに武器の手入れをすることにした。 選んだキャラクターとのサブイベントが終わると、「王の資質」と呼ばれる、主人公の人間力のようなステータスが高まっていく。今回のストロールとのイベントでは、「勇気」にポイントをもらうことできた。このようなシステムもまた、「ペルソナ」シリーズに実装されていたものだ。おそらく開発/発売元のアトラスが「JOURNEY MODE:海洋都市での遠征」で体験してほしかったのは、鎧戦車での移動と、仲間キャラクターとの交わり、「王の資質」を巡るシステムだったのではないか。 そのように過ごしているうちに、鎧戦車は目的地へと到着。私が選んだイヌンド村では特筆すべきイベントが起こらず、そのまま湿地帯の野営地へ移動し、やがて夜の時間帯へと移行した。ここで見た甲板からの景色、一人ぽつんと佇むヒュルケンベルグの姿もまた、私にとっては試遊における見どころのひとつだった。 ダンジョンを探索できる「DUNGEON MODE:占拠された大聖堂」を含めると、『メタファー』に盛り込まれるであろう体験が網羅されていた今回の『TGS2024』での試遊。プレイを通じて感じたのは、同タイトルがフリークの期待どおりの仕上がりとなっていることだ。 バトル部分では特に「真・女神転生」の影響を、アドベンチャー部分では特に「ペルソナ」シリーズの影響を色濃く感じさせられた。どちらもが現在進行形で多くのプレイヤーに愛されるRPGであるだけに、その取り込み方さえ間違えなければ、面白くならないはずがないのである。 『メタファー』には間違いなく、両者のエッセンスがうまく盛り込まれている。発売までは、あと10日ほど。制限なくプレイできる日が待ち遠しくなる試遊体験だった。
結木千尋