「頼れる存在に」薬物・銃器捜査のスペシャリスト 「近畿の警察官」に京都府警の村木警部補
近畿2府4県の優秀な警察官をたたえる第138回「近畿の警察官」(産経新聞社提唱、京都府信用金庫協会など協賛)に、京都府警からは向日町署刑事課組織犯罪対策係の村木努警部補(55)が選ばれた。薬物・銃器事件捜査のスペシャリストで、後進の育成にも情熱を注いでいる。取り調べで立場や考えの違う相手と接する際に意識する「普通」、そして地道で厳しい捜査でも絶対に諦めない心。その柔和な表情の裏側にある本質に迫った。 「表に出る仕事ではないと思っていた。何か、すごいことをしたわけでもありません」。謙虚な姿勢で受賞を受け止める村木警部補。良質な捜査はチームワークが大前提だとした上で「一緒に捜査に取り組んだ仲間のおかげです」と感謝の言葉を述べた。 約30年に及ぶ警察官人生。今も忘れられない出来事が、交通課での研修中に起きた。取り締まり中、ある運転手に絡まれたことでトラブルとなり、取り締まりは一時中断。その際、先輩から「仕事を潰しただけで、何も結果を出していない。お前はどうしたらいいか、考えろ」と言葉をかけられた。どうすれば相手を変えられるのか。自問自答する中で、仕事との向き合い方を真剣に考えるようになった。 配属された松原署(現東山署)の生活安全課では少年係に所属。「当時は少年事件の数も多かった。少年たちの相手をすることで、取り調べの力を鍛えられた」。それぞれの道に進み、更生していくかつての非行少年ら。その姿を目にし、警察官としてのやりがいを見いだしていった。 刑事となり、暴力団事件の捜査にも尽力した。取り調べなどでは組員と1対1で話す場面も珍しくない。意識したのは、自分と相手の「普通」の認識が異なるということ。相手との違いを認めながら価値観の差を埋め、距離を近づけていく。「その人が何を大事にしているかを理解することが重要」と力を込める。 薬物事件の捜査では、情報を的確に読み取り、地道な内偵捜査を続けては芋づる式に容疑者らを摘発した。捜査では気が遠くなるような長い時間を要することもあるが、その苦労の分、報われたときは「ホッとする」という。 「頼れる存在でありたい」と後進の育成にも汗を流す。部下に対し「優秀な若者たちが夢を持ち、この道に入ってきてくれた。楽しさを感じながら良い仕事をしてほしい」と期待を寄せた。(森天音)