35歳課長が青ざめた…「不倫相手をえこひいき」して主任にしたら、妻と部下から「まさかの反撃」
部下には総スカン、そして妻は「怒りの行動」を…
A沢さんは4年前に結婚し、専業主婦の妻と2歳の子供がいる。妻は帰宅時間が夜中になったり、休日も「仕事があるから」と言って出かけたりすることが増えた夫の行動に疑問を持っていたが、子育てに忙しくやり過ごしていた。 しかし妻が偶然A沢さんのスマホからLINEを見てしまい、B中さんと付き合っていることが発覚。頭にきたので早速A沢さんを問い詰めたがシラを切りとおすので、探偵事務所に調査を依頼し証拠を集めた。 一方、A沢さんの公私にわたるフォローを受けたB中さんの仕事は順調で、冬の販促イベントでリーダーに抜擢され、結果は大成功だった。 4月のこと。課内を揺るがす出来事が起こった。 C田主任がA沢さんに食って掛かった。 「課長は今回の人事査定でB中さんを主任にしましたよね。この扱いには他のメンバー達から不満が出ています。明らかにB中さんより実績を上げている部下がいるのになぜですか?」 甲社の場合、年1回の人事査定は部署の課長が行い、主任に昇進させる場合は、人事に報告し、承認を得ることになっている。 「B中さんは販促イベントを成功させたでしょ? 実績は十分だと思うけど」 「それは彼女の実力ではなく、課長や他のメンバーが大部分のフォローをしたからです」 B中さんが主任になった後、他のメンバーのモチベーションはダダ下がり。にぎやかだった職場は暗い雰囲気に包まれ、新たな販促イベントのアイデアも出なくなった。 更に波紋が広がったのは6月上旬。A沢さんの妻が甲社に乗り込んできた。A沢さんをフロアに呼び出すと、いきなり 「子供がいるのに何やってんのよ!」 とドスの効いた大声で叫んだ。A沢さんはあわてて静止したが時すでに遅く、妻の声を聞きつけた他の社員達が集まってきた。 「この頃家に戻ってこないから何してるのかと思ったら、部下のアパートで同棲しているとは呆れたわ。私から連絡しても一切出ないし……。どういうこと?」 そして集団の中にB中さんを見つけると近くまで寄り、 「人のダンナを横取りしてタダじゃすまないから覚悟しろ!」 と言いながら、探偵事務所から入手した交際の証拠写真を床にぶちまけた。 他の社員から騒ぎを聞きつけたD宮総務部長(人事・総務の責任者)は、現場に飛んでいき、言い争いを続けている2人の間に割って入った。妻から事情を聞いたD宮部長は証拠写真を預かり、A沢さんを別室に呼んだ。 「A沢君、奥様が話したことは本当?」 「それは……」 「写真を見た限り話は本当のようだね。これは大変なことだぞ。ウチの会社は就業規則にもあるように社内恋愛禁止。上司と部下、しかも不倫だなんて許されるものではない」 D宮部長はB中さんも呼び出し事実確認を行った。自分の過ちに気づきショックを受けたB中さんはその場で泣き崩れ、次の日にD宮部長に退職届を提出した。A沢さんとB中さんのことは社内の知るところとなり、部下たちは「不倫相手をえこひいきする上司とは一緒に仕事はできない」とD宮部長に訴えた。 * * * D宮部長が言ったように、甲社では就業規則に「社内恋愛禁止」が明記されているが、じつはそれだけを理由に、社内恋愛をした社員を処分することはできない。詳しくは後編記事〈「不倫相手をえこひいき」し、妻に職場に乗り込まれた35歳課長の「その後」…「社内恋愛禁止」の会社はどう処分した? 〉でお伝えするが、社内恋愛を理由に社員の処分が認められるには、会社に明らかな悪影響や損失がもたらされた場合のみだ。 後編では、社内恋愛に対する会社の現実的な対処法や、今回紹介したA沢さんの気になる「その後」までをお伝えする。
木村 政美(社会保険労務士)