地名散歩高槻編「出灰」「芝生」「辻子」読めまっか?
関西地名散歩高槻編「出灰」「芝生」「辻子」読めまっか? THEPAGE大阪
大阪の地名を訪ね歩く小さな旅。ちょうど1年前の正月から、ゆるい連載風に書き連ねてきたが、今年の第1弾は、北摂・高槻市編をお届けしたい。キリシタン大名ゆかりの旧城下町から清流が流れる里山まで、市域の広い高槻には多彩な難読地名が点在する。「出灰」「芝生」「辻子」「上牧」。さて、いくつ読めるだろうか。
「出灰」古代からある製品を出荷していた
右に左にカーブを描きながら山道を進む高槻市営バスを下車すると、芥川のせせらぎの響きが耳に心地よい。バス停は「出灰」。正月早々から、いきなり超難関地名だ。 出る灰と書いて、「いずりは」。現代人には読みづらいが、「出」は「でる」ではなく、古書に記された「日いずる国」風に「いずる」と読めばいいわけだ。古代から石灰を産出し、朝廷に納めていたとの記録が残る。 近世に入ると、灰山仲間という生産者組合を作って出荷するほど盛んだった。今は北摂の山並みをつなぐハイキングコースになっている。バス停に集まったハイカー仲間たちが「出る灰? 何て読むんやろ」と、バスが来るまで地名談義を楽しんでいた。
神奈川県のあの市と同じ読み方「辻子」
陽光うららかな「芝生公園」。緑が美しい公園だが、「芝生」は地名で、「しぼ」と読む。16世紀の古文書には「しぼう」「しはう」と記されており、いつしか「しぼ」と発音されるようになったようだ。取材に訪れた折、公園の一隅に数名のシニア世代が集まり、ときおり冗談を飛ばしながら仲良く語り合っていた。 キリシタン大名高山右近が一時城主を務めた高槻城。今も城下町の面影を残す地域から南下すると、東西を貫く東海道新幹線と交差する。高架下で「辻子」の表示板と出合う。疾走する新幹線とからめてパチリ。「つじこ」ではなく、「ずし」と読む。 神奈川県の逗子市とは、「ずし」という読みは同じでも、こちらは漢字が違う。一筋縄とはいかないから、地名は奥が深い。 高槻の「辻子」は、街道の分岐点である辻の意味。古くからご当地は京と大阪方面を結ぶ交通の要衝だった。一方、神奈川の逗子市では、空海が仏像を守るために設置した「厨子」が地名の由来だという。