日本代表が抱えた「爆発しそうな不満」 突きつけられた現実…支えになった先輩GKの背中【インタビュー】
小川を変えた先輩GKとの食事会「不貞腐れていた僕をご飯に」
「練習ではめちゃくちゃムカつくけど、腐ったら終わりだというのは分かっていた。試合に出られない時に何ができるかと言ったら、自分の能力値をどんどん上げていくしかない。だからやっぱり練習するしかない。アピールももちろんそうだし、監督の起用法もあると思うけど、そういうのは(試合に出られない)要因ではない。あとは出ていない先輩の背中を見て『追わなきゃいけないんだ』と思えたところはあります」 当時の小川を奮い立たせたのは、磐田でGKの控えだった八田直樹氏だ。2023年限りで現役を引退したベテランの振る舞いは、それまでの人生で、世代のトップを走ってきた若手の小川にとって“学び”の連続だった。 「八田さんはジュビロで長くGKをやっていて、不貞腐れていた僕をご飯に連れて行ってくれました。出ていない時の準備の仕方、気持ちの持ちよう、他人への態度、たくさんのことを背中で教えてくれた。それを近くで見て学んできました。(年代別の)代表では点を取っているけど、リーグ戦ではベンチだったり……。プライドを傷つけられて、同じ代表の仲間たちと比べて『何で僕だけ』とズタズタにされた。それを受け入れたくなかった僕を変えてくれた」 小川が負傷によって離脱したU-20W杯でともに戦った仲間たち、たとえばMF堂安律は大会直後にオランダ1部フローニンゲンへの移籍を掴んだ。「あとから聞いた話ですけど、(U-20)W杯後に(僕を)獲得しようとしてくれていた海外のチームもあったんです。あの怪我がなかったら……とも思ったけど、すべてのことに意味があると思っているので」。そのポジティブさはNECでも、日本代表でも“今”につながっている。 「今、オランダでも語学は苦労しているんですけど、本当に幸いなことにこういう性格で良かったな、と思いますね。喋れないことで可愛がってもらえたり、楽しくコミュニケーションが取れています」。今季はここまでリーグ戦16試合で6ゴール1アシスト。あの時、小川を変えてくれた先輩がいたように、今では27歳のストライカーが多くの人々の手本となり、目標となっている。
FOOTBALL ZONE編集部・小杉 舞 / Mai Kosugi