フェアーグラウンド・アトラクションが語る、再結成と36年ぶり新作で見つめ直した「絆」
36年ぶりの新作、エディとマークの化学反応
―さて、待望のニュー・アルバム『ビューティフル・ハプニング』の話をしましょう。「シング・エニウェイ」とボーナス・トラックの「アンサータンティ」は、マークがソロ・アルバムで既に発表済みの曲です。自分のアルバムのために曲を書いているときにも、その曲がエディの歌声を求めていると感じることがありますか? マーク:「シング・エニウェイ」はエディにぴったりな曲だと思っていたよ。彼女は素晴らしい歌手だからね。彼女は歌うことで自分を救い、その歌唱はたくさんの人の命を救ってきたからね。 エディ:あら、それはどうかしら……。 ―ソングライターのクレジットをまだ見ていないんですが、エディも曲を書いているんですか? エディ:いいえ、全曲がマークの書いた曲よ。このアルバムの録音に入る前に、YouTubeで観たのが、マークが家族と「ラーニング・トゥ・スイム」を歌っているビデオだった。何度も何度も繰り返して観たわ。すごく良い曲だったから。彼の曲のなかに、私が歌いたいと飢餓感を感じる曲があるの。まるでそのビスケットを食べたくてたまらないみたいに、体が欲するのね。そんな曲なの。 それで、再結成を決めたあと、ロイと私が最初にマークの家を訪ねたとき。彼の息子のスタンがピアノを弾いてたから、「スタンを手伝ってあげましょ」と、私がギタ―を弾き、ロイがドラムスを叩き、彼の家族と一緒に歌って、とても楽しんだ。それで、マークに「あの曲を録音しましょ」と言ったの。 ―自分のアルバムとは違って、フェアーグラウンド・アトラクションでは、マークの曲を歌う歌手に徹することを楽しんでいるんですね? エディ:私にはやらないといけないことが山のようにある。社会革命史で博士号を目指しているし、母親で、家庭を守っていて、家の塗装までやっているのよ。歌って、ギターを弾き、曲を書いている。さらに、詩を書いたり、スコットランドの音楽、文化の記録をまとめたり、とても忙しい。だから、これは私にとって休暇みたいなものなの。(本来の)家庭から離れ、フェアーグラウンド・アトラクションという家族とリラックスして過ごすことができる。 それと、ドリス・デイやケイ・スターのような昔の歌手は、美しいドレスを着て、デューク・エリントンとかの楽団の前で、他の人が書いた曲を心をこめて歌った。マークはそんなことをする機会を私に与えてくれるの。 マーク:僕らの育った時代にも、シラ・ブラックやディオンヌ・ワーウィックのような歌手が、バート・バカラックの名曲「アルフィー」とかを歌ってヒット・チャート入りしていた。僕は素晴らしいと思っていた。歌手、作曲家、編曲者、バンド、プロデューサー、みんなが良い仕事をして、みんなが勝者なんだ。それが、ビートルズ以降、みんなが自分で曲を書かねばいけないと思い込む奇妙なことになってしまった。 エディ:そう、ビートルズとディランが悪いのね(笑)。 マーク:自分で曲を書かなかったら、何かがおかしいといった風潮になったんだ。 エディ:でも、パッツィー・クラインがいなかったら、ウィリー・ネルソンの書いた「クレイジー」の素晴らしさは理解されなかったかも。♪ クレイジー……(ウィリーの独特の歌唱をデフォルメして歌う)。これでは多くの人に興味を持たれなかったでしょうね。パッツィー・クラインの切ない歌が必要だった。時には解釈歌手が必要なの。リンダ・ロンシュタットやバーブラ・ストライサンドが必要なのよ。 マーク:男性と女性はそれぞれテーブルに運んでくるものが異なるからね。でも、それをうまく組み合わせると、パワフルなものが生まれるんだ。 エディ:私たちの組み合わせはそれ(『ファースト・キッス』)でうまくいったし。これ(『ビューティフル・ハプニング』)でもうまくいったと願いたいわ。