日本ワイン、今こそ船出の時! ワイン大国・フランスで日本ワインを広める男の物語
“日本ワインコンプレックス”はもう忘れよう
今回の試飲会では私自身としても大きな学びとなったことがあります。それは、純粋に美味しいワインを作っていればフランス人にも受け入れられるということです。 ずっと日本ワイン業界にはコンプレックスのようなものがあった気がします。 フランスには数千年のワインの歴史があるのに対して、日本ワインはまだまだ歴史が浅い。また、フランスなどの気候はワイン造りにとって理想的な一方で、ブドウの生育期に雨が多い日本は不利ともいわれてきました。輸出するなら日本独自の品種がいいとか、欧州で好まれる品種じゃなきゃダメ、など色々な意見がありました。 でも今回の試飲会でわかったのは、フランス人たちは、日本ワインらしさとか、自然派ワインとか、そういった括りではなく、純粋に「美味しいか、そうではないか」ということを重視していること。むしろ、日本らしさなどを気にしているのは日本人だけかもしれないとすら思いました。だから醸造家は純粋に「自分が美味しいと思うワイン」を造ればいいのだと思います。 ――一方で、フランスなどではワインの消費量が落ち込んでいるとも聞きます。ビジネスとして日本ワインが参入できる余地はあるのでしょうか? 日本でもそうですが、フランスでもワイン離れは深刻な問題となっています。 さらに追い打ちをかけるように、気候変動でフランスのブドウの糖度が昔より高くなりやすくなってしまっていて、ワインにするとアルコール度数が高くなり、酸が弱い味になるんです。すると、食事などには濃すぎるワインとなって、飲まれにくくなる。だから、どうやってアルコール度数を上げすぎないか、どうやってワインの酸を保つか、というのはワイン業界全体の課題になっています。 フランス政府も、ワイン消費の落ち込みを受け、一部の農家に対して、ブドウを抜いてオリーブを植えろ、と呼びかけることもあるほど、ワイン業界は危機に瀕しています。 とはいってもフランスでは以前としてワイン好きは多いです。だから低アルコールワインを求める人が増加しつつあるんです。 そこで声を大にして言いたいのが、日本ワインの出番が来たということです。 日本ワインはアルコール度数が比較的低いんですよね。これまでは、この度数の低さが日本ワインの悩みの種で、かつ、フランスのワインと比べれば香りも弱い、酸も弱い、薄い、なんて言われていました。でも、低アルコールワインを求める動きが出てきた。 さらに、フランスでの食事についても、かつてフランスではバターや脂をたっぷり使う料理が高級とされていましたが、今は素材の味を活かした、ヘルシーな軽めの食事が三ツ星レストランでも出てきます。すると、濃いワインよりも、軽くて素材の味を邪魔しないワインが求められるようになります。そういう点からも、今は日本ワインが日の目を浴びるチャンスのように感じています。