FRBが0.5%の大幅利下げで労働市場の悪化に先手を打つ:大幅利下げは米大統領選挙に影響も
金融市場の動揺は回避
他方、雇用、経済情勢が急速に悪化する兆候はまだ確認されていない中、FRBが初回から0.5%の通常よりも大きな幅での利下げを行うと、金融市場は先行きの景気情勢に不安を強めてしまう恐れがある。また、次回以降も0.5%幅での利下げが行われるとの観測が市場に強まり、FRBの政策が縛られてしまう恐れがある。 こうした点に配慮してパウエル議長は、「今回の決定は緩やかな成長と持続的に2%に向かうインフレ率という状況において、政策スタンスの適切な再調整により労働市場の強さを維持し得るという、われわれの確信の強まりを反映している」と、先行きの経済、労働市場に対して楽観的な見通しを敢えて示した。さらにパウエル議長は、今回の0.5ポイントの利下げについて、「FOMCが今後継続するペースだと想定すべきではない」と釘を刺したのである。 0.5%の利下げ決定を受けて、ドル円レートは直後に円高に振れたが、それは短期間にとどまった。また、ダウ平均株価も比較的小幅な下落にとどまった。金融市場で先行きの経済への不安が強まる、あるいは極端な大幅利下げが実施されるとの見方が強まることは回避できた。
理事一人が0.5%の利下げに異例の反対
FOMCが示したFF金利の先行き見通し(中央値)は、2024年中に政策金利を合計で0.50%引き下げるとの見通しとなった。前回6月の見通しと比べればより積極的な利下げを予想したが、年内あと2回の会合で0.5%ずつ合計1.0%の利下げが実施されるといった積極利下げではない。 FF金利は、2025年には計1%ポイント、2026年には計0.5%ポイントの追加利下げが見込まれた。そして2026年末時点の政策金利は2.9%と中長期の中立水準に達し、利下げ局面が終わるとの見通しだ。 今回の会合は、0.25%と0.5%の利下げ幅を巡って僅差の決定になるとの見方がされていたが、最終的に0.25%の利下げを主張して、0.5%の利下げに反対票を投じたのは、ボウマン理事一人だった。政策決定に本部理事が反対票を投じるのは異例であり、2005年以来となる。