FRBが0.5%の大幅利下げで労働市場の悪化に先手を打つ:大幅利下げは米大統領選挙に影響も
日米の金融政策が逆方向に動く異例の事態に
今回のFRBの利下げを受けて、日米の金融政策が逆方向に動くという異例の事態となった。現時点では金融市場は安定しているが、為替市場で急速なドル安円高が生じること、日米間を中心に国際資金フローが不安定になることも生じ得るだろう。8月に生じた株価の大幅下落の背景にも、日米の金融政策が逆方向に動く見通しの中で円高が急速に進んだこともあった。 このように、FRBの利下げ転換は、金融市場の潜在的な不安定性を強めるものだ。その結果、日本銀行の利上げにも制約要因になってくることも考えられる。
米大統領選挙に影響も
今回の利下げ転換、大幅利下げの実施は、11月5日の米大統領選挙直前に行われたという点でも、様々な議論を呼ぶ可能性がある。今回のFRBの決定には、政治的な背景はないと考えられるが、FRBの独立性を尊重する民主党政権に有利となることを狙ったのでは、との憶測が浮上する可能性はあるだろう。 実際のところ、労働市場、景気の悪化に先手を打って大幅利下げを実施したことは、先行きの経済見通しを好転させ、現在の民主党政権に有利に働く可能性は考えられるところだ。 他方、共和党の大統領候補トランプ氏は、以前より大統領選挙前の利下げは、民主党政権を利するものであるとして、FRBを強くけん制していた。今回の決定について、トランプ氏は批判を強める可能性があるだろう。 他方でトランプ氏は、自身が大統領になればFRBに利下げさせるとし、また、FRBの金融政策決定に大統領が関与するように制度を見直す考えを示唆している。仮にトランプ氏が再選されれば、FRBに対する介入を強化する可能性は一段と高まったとも考えられる。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
木内 登英