ディスプレイが透明に? まだまだ進化を続ける各社のテレビ【CES2024レポート】
年明けにラスベガスで開催された世界最大のテクノロジー展示会CES2024。毎年現地を訪れている、本誌連載「家電コンシェルジュ」の執筆者・麻倉怜士が、注目の展示や製品をレビューする。 【写真】まだまだ続くテレビの進化、ハード面の注目は「透明ディスプレイ」。
パナソニックはアマゾンと組み、「fire tv」を発表
テレビは決してCESの主役ではない。相当、下位の脇役だが、私にとっては毎年、新しいトレンドを発見する宝庫だ。その意味で、今年のCESのテレビも断然、面白かった、まずは、パナソニックのプレス・カンファレンスでテレビが復活したのが、たいへん印象に残った。私は30年ほどCES取材を続けている。90年代後半のパナソニックのテレビ展示はリアプロジェクターや大画面ブラウン管が並び、その後デジタル放送に対応し、新しいデバイスとして液晶やプラズマが登場し、とても賑やかだった。ところがここ10年のパナソニックのプレス・カンファレンスはサステナビリティ一色になってしまい、たいへん寂しい思いをしていた。しかし、今年のプレス・カンファレンスでは有機ELテレビ、一眼カメラ、ひげそり機などが登場し、時間を掛けて丁寧に説明していた。 パナソニックの新登場の有機ELテレビで印象に残ったのが、「コンテンツ・ファインデング」。放送に加え無料、有料のネットコンテンツが溢れ、いったいどこに見るべき番組があるのか。それは、大海の中から一匹の魚を探すようなものだ。パナソニックは、数あるテレビ用OSの中から、アマゾンの「Amazon Fire TV」を選んだことを高らかに宣言。ネットと放送、ユーザー自身が持っているエアチェックコンテンツをシームレスに選択できる機能を、アマゾンと共同開発した。
パナソニックエンターテインメント&コミュニケーションの代表取締役社長&CEOの豊嶋明氏に聞いた。 Q:テレビのOSにFire TVを搭載したのも注目ですね。基本的にはコンテンツ・ファインディングからの発想だと思うんですが、山ほどあるコンテンツの中から、ユーザーに最適なものを選んでくれるということは、これまで日本のテレビメーカーはあまりやっていませんでした。そこで今回、なぜFire TVを採用したのかお聞かせください。 豊嶋:今、言っていただいたところが、ひとつの大きなポイントです。そもそも、テレビ放送を見るためにチャンネルを選ぶだけの機械というのが、昔の“テレビ”でした。しかし今は、見たいコンテンツは人によってまったく違いますし、放送やネットなど、色々なコンテンツが選びきれないほどあります。加えて個人で録画した番組も含めると、お客様が自分の見たいものが探し出せない、もしくはたどり着けないといった悩みがあると感じていました。そんな中で、最適なコンテンツを自分の見たい時に探し出せる機能は重要だと考えました。そこでアマゾンと組んでFire TVのユーザビリティを取り入れることによって、その課題が解決できるんじゃないかと思ったのです。そこにわれわれが持っている放送とネットの融合技術を加えることで、お客様が気づいていない番組をお届けできる、コンテンツに対する新しい出会いを提供できる機能を充実させていきたいと考えています」。 たいへんよい動きだ。何を観るのが良いのか、途方に暮れているユーザー(私もそうだ)には朗報だろう。コンテンツ・サーチで圧倒的に優れるのがアメリカのTiVoOS。CESで取材したところ、昨年はトルコのベステルがTiVoOS搭載テレビを発売、次いで日本のシャープがヨーロッパで発売していた。今年は、中国のテレビメーカーのKONKAが採用。その凄さは膨大なメタデータの蓄積と自然言語処理。映画の名前は忘れたがキーワードは覚えているという場合、「I'll be back」と言うと、一連のターミネーター作品が、「Let it go」と言えばアナ雪が、ずらりと表示される。つまり曖昧検索能力が高いのだ。