「たった1枚の領収書」で1000万円超の節税も!不動産の相続で絶対に忘れてはいけないこと
親が持っている不動産をいずれ相続する見込みがある場合、まず準備しておくことは何だろうか。相続税額をどうカットするかは 、相続人たちの最大の関心事だが、それを左右する決定的な書類について、実は多くの人は関心が低い。親が健在なうちにしっかり用意しておくべきその重要書類とは…!? ※本稿は、内藤 克『残念な相続〈令和新版〉』(日経プレミアシリーズ)の一部を抜粋・編集したものです。 【この記事の画像を見る】 ● 不動産を売って相続税を工面すると 譲渡所属税も発生してしまう 「先生、実は相続税が払えそうもないので親から相続した土地を売却しようと思うんですが」 「うーん。まずは他の方法を考えてみましょう」 「なぜですか?」 「相続税を払うために相続財産を売却した場合は、所得税も取られちゃうんですよ」 「相続税」は相続時の価格に対して課税されます。一方、「所得税」は被相続人(例:親など)が購入した金額と相続人(例:子など)が売却した金額の差額(キャピタルゲイン=値上がり益)に対して課税されます。そのため相続税を払う目的で相続財産を売却しても、所得が発生していれば所得税は課税されてしまうのです。
● 不動産取得価格は非常に重要 絶対に購入時の領収書をなくすな! そしてこの相続財産の売却に際しては、購入時の領収書があるかどうかで手取り額が大きく変わってきます。いい例が不動産で、不動産登記が電子化された今、昔のように「権利証」を大切に保管する必要性は薄れてきました。むしろ大切なのは「領収書」なのです。 ではなぜ、領収書がそこまで重要になるのでしょうか。 不動産の売却を例に説明しますが、まず譲渡所得の計算は、その不動産の所有期間によって異なります。所有期間が5年超(長期)の場合と5年以下(短期)の場合では税率が異なり、短期の譲渡にかかる所得税は、長期譲渡にかかる所得税のなんと約2倍となっています。 またややこしいことに、所有期間が5年超かどうかの判定は購入日から譲渡日までの期間ではなく、譲渡した年の1月1日現在で判定します。 譲渡にかかる所得税(住民税含む)は次のように計算します。 長期譲渡の場合:{譲渡金額-(取得費+譲渡費用)}×20.315% 短期譲渡の場合:{譲渡金額-(取得費+譲渡費用)}×39.63% ここでいう取得費は実際にいくらで買ったか(取得価額)とは異なり、減価償却費を加味して計算した金額です。そのため取得価額よりも低い金額となり、利益が出やすい計算になっています。 問題はここからで、相続で取得した不動産の場合は長い年月が経過しているために、「購入当時の契約書や領収書など、取得価額を示す資料がいくら探しても見当たらない!」というケースがあります。この場合、税務署は譲渡価額のわずか5%しか必要経費として認めてくれません。つまり、領収書がないと税金の計算上、きわめて不利なことになるのです。