戦力外通告に「最初は、なんで?」 ソフトバンクから移籍した嘉弥真新也が「成長するにはヤクルトは最高」と語る理由
【髙津臣吾監督も高い期待】 そして、春季キャンプでは、高津監督に教わった「腕を上げて、上から叩くというイメージ」を自身に植えつけ、課題の修正に努めてきた。 「去年に比べてスライダーもよくなっているし、出力もだんだん上がってきている。今年は楽しみです」 さっそく課題克服に好感触を得ている。 髙津監督も高い期待を寄せる。 「特殊な投げ方をしているので、その特殊なものを活かさなきゃいけないと思っています。カーブだろうが、スライダーだろうが、落ちる球だろうが、なんだっていいんですけれども、相手が嫌がる、相手を打ちとる形を、しっかり思い出してもらって、大事なピースの1枚になってほしいと思います」 ライブBPでの嘉弥真の登板を見てこのように話していた。
【50試合以上の登板が目標】 その後も2月21日の楽天との練習試合に登板すると3人をピシャリと抑えた。楽天戦は3人とも右打者だったが、同24日の阪神とのオープン戦では左打者の近本光司と中野拓夢と対戦し、中野には四球を与えたものの近本はファーストゴロに打ちとっている。さらに、セーブポイントも上げた。3月5日には、古巣ソフトバンク相手に1回1安打無失点に抑えた。 昨季のヤクルトは左の中継ぎが手薄で、田口が抑えに回ったため、実質稼働していたのは山本ぐらいだった。今季は嘉弥真もいる。髙津監督が言うように、中継ぎとしても、ワンポイントとしても、貴重な存在になっていきそうだ。 「左ピッチャーがいないと言っても、右ピッチャーにもたくさんいいピッチャーがいるので、しっかり成績を残さないと1軍の枠に入れない。左で抑えるのが僕の仕事。しっかりアピールして、ちゃんと戦力としてみなされるようにしないといけないというプレッシャーを感じています。50試合以上投げることが目標。もう一度スライダーを見つめ直して、しっかり投げたいと思います」 嘉弥真は手綱を締め直すようにこう話していたが、ピンチの場面こそ自身の出番だという思いがある。チームが掲げる今季のスローガン『ヤり返せ!』のとおり、不振だった昨季の分も活躍を誓う。 【プロフィール】嘉弥真新也 かやま・しんや 1989年、沖縄県石垣市生まれ。八重山農林卒業後、ビッグ開発ベースボールクラブから2010年にJX-ENEOSへ移籍。2011年ドラフトでソフトバンクから5位指名を受けた。2022年は56試合に登板し、防御率0.99、28ホールドと活躍。2023年にソフトバンクから戦力外通告を受け、ヤクルト入団。左投左打。
和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi