早田ひな:卓球 王国・中国勢が最も警戒する“遅れてきたヒロイン”【パリ五輪・頂を目指すアスリートたち】
3種目で挑むパリ五輪
今年2月の世界選手権(韓国・釜山)の団体戦で、日本は中国に2‐3で敗れ銀メダルに終わったものの、先に王手をかけるなど決勝で中国をあと一歩まで追い詰めた。 この試合で早田は東京五輪金メダリストの陳夢(チェン・ムン)と対戦。過去7戦全敗だった相手から初勝利を挙げた。オールラウンダーで決定力も兼ね備える相手に対し、「(自分が)好きなようにプレーしては勝てない」と、陳が予測できないボールを打つなど変則的なプレーを心掛けた。「相手が一瞬ひるんで次の反応が遅れる」と陳夢に強打させず、勝利をもぎとった。 「今までで一番、中国を苦しめたと思う」 団体戦第4試合の孫穎莎(スン・インシャ)とのエース対決には敗れ、「力不足を感じた」と地力の差を痛感しながらも、パリに向け攻略のヒントをつかんだ。 中国メディアは日本への警戒を強めている。日本のエースに関し「中国女子卓球における次なる最大の敵は、明らかに早田ひなだ」と評し、「もはや侮ることなどできない」と危機感を募らせる。 パリ五輪では女子シングルス、男子エースの張本智和と組む混合ダブルス、女子団体戦の3種目への出場が予定されている。 いまだ中国の壁は高く、金メダルを取ることは決して簡単ではない。それでも早田が見据えるのは頂点のみ。遅れてきた黄金世代の新ヒロインは初の夢舞台までさらに進化し続ける。
【Profile】
モリエ ミサキ 大学卒業後、サッカー誌で文筆のキャリアをスタートさせ、その後、フィギュアスケート誌や韓国エンタメ誌などの編集に携わった。現在はフリーランスとして一般誌やwebなどでスポーツ、ライフスタイルなどを中心に執筆、編集活動を行う。