「リーマン・ショックにありがとう」 ── インベスターズクラウド古木大咲社長
生い立ちを聞くと大変な苦労をしているはずなのだが、そんなことは微塵も感じさせない。朗らかで真摯な人柄は、投資用アパート経営のクラウドサービスを提供することで年間138億円を売り上げる。福岡市に本社を置く「インベスターズクラウド」の古木大咲(だいさく)社長(34)。古木社長のキャリアは高校中退後、不動産物件の清掃スタッフから始まった。
経験を積む時間は「量で勝負した」
実家は鹿児島県。もともと建築関係の自営業であり、いずれは実家を継ぐことになっていた。中学3年生の時に父親が他界したことがきっかけで、単身、福岡に移住。高校1年のときに中退し、コンビニや居酒屋などいくつものアルバイトに就いては辞め、就いては辞める日々を繰り返していた。 正月に親戚が集まった時のことだ。「そんな生活をしているやつはダメだ」という親戚の声が胸に刺さった。「バカにされて、悔しくて、上に行くためには経営者になるしかないと。そのとき社長になると宣言したんです」。 職を探しているうちに、不動産管理会社の正社員に就職が決まった。「経営者になるためには営業から始めたい」と思っていたが、配属先は管理部門。物件清掃が振り出しだった。しかし、営業職をあきらめきれず、休日に営業に回った。3年目からは業績が認められて営業を担当、年間20棟を販売するほどに。 この会社には4年半勤めたが、年間の休みは正月の1日だけだった。誰よりも早く出社し、誰よりも遅く退社した。ブラック企業だったわけではない。「自発的に働きました。いずれ独立することを考えていましたから、そのためには経験を積む時間が必要でした。量で勝負していましたね」と振り返る。 2005年に一人で個人事業として独立。翌年には会社を起こし、デザインアパートの分譲を始める。銀行からは借り入れができなかったため、ノンバンクから借りた。持ち前の営業力を武器に初年度は9320万円、次年度は11億8599万円とあっという間に売上は伸びていった。