中島みゆきの清純さと独特の声の響きに感動 1970年代、若者の間では「君はみゆき派ですか、ユーミン派ですか」
【昭和歌謡の職人たち 伝説のヒットメーカー列伝】中島みゆき(上) 女性シンガー・ソングライターといえば、やはり中島みゆきと松任谷由実か。1970年代、若者の間では「君はみゆき派ですか、ユーミン派ですか」とよく聞かれたものだ。都会的なユーミンと自然派のみゆきという具合に、音楽の趣向の違いで、お友達になれるかどうかが決まる案配だ。 【写真】眼鏡姿で軽快にステップを踏み、10着近い衣装替えで魅了した中島。チャーミングなステージは不変だ 2人は人間の本性である喜怒哀楽、夢と憧れを自分の生活目線で素直に歌という作品で表現している。中島を初めて見たのは73年のテレビ画面。北海道の牧場の柵に腰掛け、ギターを弾きながら歌っていた。清純さと声の響きが独特でマスクも愛らしく、新しいスターの誕生を感じさせた。 入社したばかりの新入社員だった私は感動で言葉がなかった。心を揺さぶられた。日本版ジョーン・バエズの登場ではないかと思えた。 中島みゆきの歌詞は普遍的なテーマが多く、日常の生活の中から感じ取れる心情を、日本語の比喩表現を巧みに使って描いている。 NHK「プロジェクトX」の主題歌「地上の星」は働く人々をテーマにしたものだ。空には星が輝くが、地上にも人知れず立派な仕事に従事する人もいるんだと。人は誰も「唯一無二」の存在だと主張している。この曲はオリコンチャート1位に躍り出た。 彼女の曲には転調も多い。急に映像が切り替わるような刺激があり、聞く側に緊張感が広がる。そして時に歌唱にも非常に細かいビブラートが入る。それは静かに訴えるように響く。 1975年に「アザミ嬢のララバイ」でデビューし、第10回ポピュラーソングコンテストと第6回世界歌謡祭でグランプリを獲得し、同年発売の「時代」はオリコン1位に輝いた。 77年「わかれうた」、81年「悪女」、94年「空と君のあいだに」、2000年「地上の星」と1970年代から2000年代の4年代にわたりシングル1位を獲得している。 そして中島といえば、1989年から始めた独自の創作音楽劇である「夜会」。どこかおちゃめでキュートな女などを演じる。歌あり、芝居あり、舞台装置も見どころ満載のステージなのだ。 2011年の東日本大震災では、多くの被災者が「時代」や「ファイト!」などの楽曲で勇気づけられた。そして、中島の作品は近隣の国でも多くの人々に聴かれている。