4WDターボの先駆者はアウディ。日本国内ではマツダ。WRCに出場する車両は4WDターボで埋め尽くされた
1980年代、日本の自動車メーカーは新技術の導入に積極的だった。その中で注目したのが、航空機とモータースポーツで使われていたターボチャージャーとスーパーチャージャーだ。ターボは空気をエンジンに押し込んでパワーを生むもので、その強力なパワーを確実に伝えることができるシステムがフルタイム4WDだった。 【画像13枚】国産のフルタイム4WD+ターボたち。マツダ、スズキなど 【時代を席巻したフルタイム4WD+ターボたち】 4WDターボの魅力を世間に知らしめたのはアウディだ。時代に先駆けて80年に4WDのクワトロを投入し、WRC(世界ラリー選手権)で好成績を収めた。そして83年9月、猛追するライバルたちを突き放すために直列5気筒エンジンをターボで武装したスポーツクワトロを送り込んだ。このときはグループBのホモロゲーションを取得する目的で200台だけ限定発売された。 85年にはイタリアのランチアが、やはりWRCのグルーブBのホモロゲーションを獲得するためにランチア・デルタS4を投入。この設計コンセプトは、グループAのモータースポーツ用モデル、HF4WD(88年にHFインテグラーレに進化)に引き継がれている。 同じ時期、日本でも4WDターボ旋風が起こった。引き金を引いたのは、スバルではなくマツダだ。85年初頭に登場したBF系ファミリアは、10月に日本初のフルタイム4WDを加えた。プラネタリーギア式のセンターデフを用いたフルタイム4WDで、前後のトルク配分は50対50の固定式だった。また、主役を演じるGT-Xは、車高を上げ下げできるハイトコントロール機構も採用している。 心臓部は1.6LのB6型直列4気筒DOHC4バルブにインタークーラー付きターボを加えたものだ。このファミリア4WDは86年からWRCに参戦し、3勝をあげた。89年にファミリアはモデルチェンジし、GT-Xは排気量を1.8Lに拡大。92年に発展型のGT-Rが登場し、これはターボの大型化などによって210ps/25.5kg‐mを発生する。また、グループAの公認を取るための限定モデル、GT-Aeも送り出された。 FFスペシャルティカーに転じたトヨタのセリカも、86年秋にフルタイム4WDのGT-FOURを仲間に加えた。メカニズムは、3S-GTE型DOHCターボにセンターデフ+ビスカスカップリングの組み合わせだ。このセリカGT-FOURもWRCで大暴れしている。これに続く2代目のST185系セリカGT-FOURは、93年にコンストラクターズとドライバーズ、両方のチャンピオンに輝くなど、不滅の金字塔を打ち立てた。 NISSAN SKYLINE GT-R BNR32 1989年に登場したR32GT-Rは、16年ぶりに復活したGT-Rということが話題となったが、そのメカニズムも大きな注目を集めた。エンジンはレースでの使用を想定して開発された2.6LツインターボのRB26DETT型で、駆動方式は状況に応じて前後配分を0:100から50:50まで自動的に変化させる4WDシステム「アテーサE-TS」。純粋なフルタイム4WDではないが、ハイパワーと優れたトラクションで、圧倒的な速さを誇った。 MAZDA FAMILIA GT-X BG8Z 6代目でフルタイム4WDターボを投入したファミリアは、7代目でさらに戦闘力を高めた。エンジンは、先代の1.6Lに代えて1.8LターボのBP型を搭載。駆動方式はフルタイム4WDだが、よりスポーツ走行に最適な前後トルク配分が43:57システムを採用。WRCにも出場し、エボリューションモデルのGT-Rもラインナップされた。 初出:ハチマルヒーロー 2017年5月号 Vol.41 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
Nosweb 編集部
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