「サーフィンで深刻な環境破壊に気付いた」実業家エリック・カワバタさんが語る海洋保全の今
ーーエリックさんは、社会に出たときから環境にまつわる事象に敏感だったと思います。そのきっかけはありますか? エリック 大きなきっかけは大学時代です。私が通っていたUC バークレー校では、環境意識の高い教授たちがとても多かったのです。私は法律と経済を専攻していましたが、授業で扱われる事例がすべて環境関係でした。初めての授業の教科書のタイトルは「環境経済学」。 例えば、廃棄物の埋め立てが飲み水に与える影響や、工場で排出されるCO2をどのぐらい規制すると会社は潰れてしまうなど、環境問題をトピックに、法律と経済のバランスを学んでいくんです。 環境と企業活動を結びつけていく私の考え方は、大学時代が礎になっていると思います。いまもそれは心に残り続けていますね。
海が好きだったからこそ、進む環境破壊に気づいた
ーー環境問題は多岐に渡りますが、なかでも海に着目した理由はどういった点でしょうか? エリック もともとサーフィンやダイビングが趣味なんです。マリンスポーツをずっとやってきましたが、ある頃から湘南や葉山の海に潜ると、熱帯魚を見ることが増えてきました。 通常、海流に乗って熱帯魚の卵が流されてきても、水温が低いと冬を越すことは難しい。それなのに、越冬し成魚となった熱帯魚を春先の海で見かけることが増えた。 沖縄にいるサーフィン仲間も、温暖化の影響で海水温が高くなったり、珊瑚礁が死んでしまっていたりするのを目にし、環境が壊れてきていることを実感していました。海が身近だっただけに、自分たちにできることをやりたいと思ったんです。 ーー現在の海の状況、海洋プラスチックの状況をどう見てますか? エリック 世界のどこか一カ国だけではとても解決できない問題だと思います。例えば 、日本は他国と比べてポイ捨てが少ないですが、 廃棄プラスチックを大量に輸出しているんです。そして輸出先は、OECD※に加盟していない国。 受け取る側は、受け取ってリサイクルすることを約束しているのですが、不明瞭な部分も多い。私たちのタイにあるNPO法人で調べたところ、リサイクルしやすいものだけを選別し、それ以外はゴミとしてそのまま放置したり海や川へ流したりしていることがわかっています。 ※OECD(経済協力開発機構)はヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38ヶ国の先進国が加盟する国際機関。 ーー日本では出したゴミはそのままリサイクルされていると思っている人が多いかもしれません。 エリック 日本において、ほとんどの家庭ゴミが焼却されていますが、事業所からの廃棄プラスチックの輸出が本当に多いのです。以前は中国に輸出していました。現在は中国で「廃棄プラスチックの輸入禁止法律」が施行されたので、東南アジアに輸出されています。それがゴミ焼却場施設を多く持たない国だとしたら、ゴミがどうなるかは容易に想像できるでしょう。そのまま溢れて廃棄されてしまうことになりますよね。