《ブラジル記者コラム》南米で「戦争屋」と呼ばれた男=軍事独裁政権を支持したキッシンジャー
この「コンドル作戦(スペイン語:Operación Cóndor)とは、米国の支援を受けて主に南米大陸南部の軍事独裁政権によって実行された、国境を越えた政治的弾圧のことだ。これには、他国に亡命した政敵を諜報機関が暗殺する作戦が含まれていた。 これはチリの独裁者アウグスト・ピノチェトの要請により、1975年11月、チリの秘密警察DINA長官マヌエル・コントレラスは、コンドル作戦を実施するため、チリ、ウルグアイ、アルゼンチン、パラグアイ、ボリビア、ブラジルから50人の諜報部員をチリに招待。のちにエクアドルとペルーも参加した。 コンドル作戦の秘密的な性質のため、コンドル作戦に直接起因する正確な死者数には多くの議論がある。一部の推定では、少なくとも5万人の死亡者、3万人の行方不明者、40万人の逮捕が行われたと推測されている(7)。主な作戦行動は1976年から1978年の間に行われた。
キッシンジャー支援の軍政への揺り返しが現在の「ピンク・タイド」へ
キッシンジャーが南米で「戦争屋」と呼ばれている陰には、このような〝業績〟がある。昨年のルーラ大統領選当選を受けて、22年10月31日付時事通信は《左派政権、南米10カ国中7カ国に=「ピンク・タイド」最高潮》の中で、《南米の「ピンク・タイド」(ピンクの潮、共産主義化=赤化までいかない左傾化)は最高潮を迎えている》と報じた。 コラム子が見るところ、南米諸国の政治体制は「デフォルト(初期設定)状態」が左寄りという特徴がある。植民地から独立という歴史的な経緯による経済発展の遅れ、世界最悪の格差社会に伴う社会的な矛盾などの歪が集中しており、それが国民からの左派シンパシーを生むのかもしれない。 放っておくと社会主義化・共産主義化しがちだから、かつて米国はキッシンジャーなどを通してCIA工作を行い、南米に軍事政権を林立させ、強引な右への揺り戻しを行っていた。ここで振り子が強烈に右に触れたことにより、民政移管後に揺り返しが起きて、2000年代から南米諸国で左派台頭「ピンク・タイド」が起きた。さらにその後、この左派台頭に対抗して、右派による揺り返しが起きるなどのサイクルを繰り返している。 その意味で、キッシンジャーの〝遺産〟は今もはっきりと南米に傷跡を残している。(深) (1) https://www.brasil247.com/mundo/senhor-da-guerra-e-articulador-de-golpes-de-estado-na-america-latina-kissinger-chegou-a-ganhar-um-premio-nobel-da-paz (2) https://www.bbc.com/mundo/noticias-america-latina-65726655 (3) https://veja.abril.com.br/mundo/profunda-miseria-moral-a-reacao-dos-chilenos-a-morte-de-henry-kissinger (4) https://www.bbc.com/mundo/noticias/2016/02/160212_polemico_legado_henry_kissinger (5) https://g1.globo.com/mundo/noticia/2023/11/30/kissinger-apoiou-ditadura-militar-e-trabalhou-para-transformar-brasil-em-aliado-dos-eua-na-guerra-fria.ghtml (6) https://outraspalavras.net/geopoliticaeguerra/o-brasil-eua-e-o-hemisferio-ocidental-2/ (7) https://web.archive.org/web/20070628021303/http://www.el-universal.com.mx/editoriales/34023.html