富士山が山梨側で山開き 富士講信者や山伏が練り歩き前夜祭
山梨県側の吉田口登山道が山開きし富士山に夏山シーズンが到来した。前日の6月30日には富士吉田市で富士山開山前夜祭が催され、白装束の衣装に身を包んだ富士山信仰の信者らが北口本宮冨士浅間神社に向けて市内を練り歩き、神社ではお道開きなどの神事が厳かにとり行われた。静岡県側の登山道は7月10日に山開きする。
山梨県富士吉田市にある北口本宮冨士浅間神社に富士講の信者らが参集し、茅の輪くぐりや登山者の安全を祈願するお道開きの神事が執り行われた。富士講信者や神社宮司らは、富士急河口湖線の富士山駅に隣接する公園に参集し、その後、列を作って市内を練り歩きながら約1.4キロ離れた北口本宮冨士浅間神社へと向かった。富士講は、近世に江戸を中心につくられた富士山信仰のための仕組み。庶民の間に広まった富士山信仰だが、だれもが江戸から富士山に詣でることができない時代。そこで、お金を集めて代表を選び、皆の祈願を託す講を組織し、それが富士講として現代まで続いているという。 富士山駅に隣接する公園をスタートした一行は、そうした富士講信者の人たちのほか、富士吉田市の婦人部や、この日のために江戸時代さながらに東京・日本橋から4泊5日をかけて歩いて参加した人たち、また、東京・八王子の高尾山の山伏の姿も。高尾山の山伏は富士山で登拝修行をしており、また、富士講の信者の道を再興するなどしたことから8年ほど前から開山前夜祭に参加するようになったという。山伏たちは時折、ほら貝を吹き鳴らして歩き、山開きのムードがさらに高まっていく。
沿道では見送りに出た人たちが一行に手を振ったり、声をかけたりして和やかな雰囲気。そうした沿道の人たちの中には御師(おし)と呼ばれる人の姿も。御師は、富士講の信者が富士山を詣でた際の宿泊所となる宿坊の経営者であり、また、富士信仰を布教する宗教者でもある。一行が練り歩いた上吉田は、吉田口登山道の拠点となっており、御師を中心に町が整備されている地域。まさに富士山信仰の”メッカ“だ。 一行は北口本宮冨士浅間神社に到着した後、茅の輪くぐりをし、その後、前夜祭神事として登山者の安全を祈願するお道開きの神事が行われた。日本橋から歩いて参加した札幌在住の68歳の女性は、「日本橋から富士吉田まで歩いてみたい、体験してみたいという思いから参加しました。素晴らしい体験でした。今日は富士山には登りませんが、9月にまたきて登る予定です」と話していた。