なぜ私は逮捕されたのか「乳児の父親は無罪」判決が指摘した医師の不自然な対応と沈黙する病院
■「失われた家族の時間は戻らない」 検察側は上告を断念し、2024年3月、男性の無罪判決が確定した。 無罪が確定した森口流星さん(25)「検察官は起訴した時点で、私がどんな方法で暴行を加えたのかをはっきり説明していませんでした。1審判決時点でもはっきりさせることはできませんでした。結局はっきりできないまま、検察官は控訴までしました。最終的に福岡高等裁判所で検察官が主張した最も可能性が高い暴行の内容は、私が息子の腕を足で踏んづけて丸太のように転がした、というものでした。私は意味が分かりませんでした。本気でそんな主張をしているのかと腹が立ちました。私たち家族の失われた時間は戻らないということを忘れないでほしいです」 ■佐賀県医療センター好生館に見解を聞いた 確定した判決で、研修医が受診した乳児を骨折させた可能性を指摘された、佐賀県医療センター好生館。取材に対し、4月5日「判決内容を詳細に把握していないためコメントする状況にありません」と回答した。福岡高裁の判決から3週間。判決確定から1週間がたっていた。 ■森口さんが失ったもの 森口さんは、事件から約10か月後にようやく保釈が認められた。小さかった息子は、会えなかった期間に大きくなっていた。当時勤めていた会社は「自主退職」を余儀なくされ仕事も失った。 森口流星さん(25)「やっと保釈が認められて、約1年ぶりに息子に会うことができ、信じられないほど大きくなっていてうれしかったのと同時に、息子の成長を見られなかったことがとても悲しかったです。保釈後も長い間、妻と息子と一緒に暮らすことが許されませんでした。犯人扱いされているようで、友人や知人からも疑われているようで、人目を気にしながらの生活は本当に嫌でした」 長男と引き離されたのは父親である森口さんだけではなかった。長男は事件後、児童相談所に保護された。母親である妻も面会させてもらえなかったという。 (以下、弁護団によると) 事件発生から約2か月後、まだ逮捕前だった森口さんと妻は、児童相談所の職員から、”父親が暴行して長男を骨折させたこと”を前提に今後どうしていくべきか家族で話し合いをするよう言われたという。2人は、「やっていないのにそんな話をするのはおかしい」と反論したが、職員から「あなたたちは何をしたのか分かっていますか」と強い口調で言われたと話す。弁護団によると、児童相談所から長男を返す条件として提示されたのは、当時専業主婦だった母親が仕事をすることと、日中、長男を保育園に入れることだった。その後、森口さんが逮捕され、妻は仕事を始めた。それでも児相から子供を返してはもらえなかった。 事件から3か月後の2021年9月。妻の面会が認められた。ただ、月1回、1回につき1時間以内、付添人をつけることが条件だった。 2021年12月。児童相談所から「複数人で常に長男を見られる環境でないと子供を返せない」と言われた。森口さんの妻は、親戚と一緒に暮らすため、引っ越しを余儀なくされた。 2022年6月、妻のもとへ長男が返された。事件から1年がたっていた。