<独自>政府、避難所で温かい食事提供へキッチン資材を備蓄、地元調理人を雇用
災害時に避難所で温かい食事を提供するため、キッチン用資機材を地方自治体に備蓄し、地元で調理人や配送ドライバーを雇用する手法を政府が検討していることが11日、分かった。複数の政府関係者が明らかにした。政府はプッシュ型で自治体を支援するため資機材計40セットを全国8カ所に分散配備。年内にも避難所運営ガイドラインを改定し、自治体に運用方法を周知する。 【表でみる】避難所への「温かい食事」提供のイメージ 今年1月の能登半島地震では避難生活での栄養の偏りによる健康への影響が問題となった。南海トラフ巨大地震の発生が懸念される中、災害対応策を一層強化する。 政府が購入を検討するキッチン用資機材一式は、簡易テント▽大型コンロ▽大型炊飯器▽調理台▽保温庫-など。1回当たり300~400人分を調理でき、価格は1式で700~800万円を念頭に置く。 地方創生関連の交付金に新設する枠組みを通じ、都道府県や政令指定市などの自治体に購入を促す。国は備蓄拠点に40セットを分散配備し、地震発生後にプッシュ型で自治体を支援。令和6年度補正予算案に経費約3億円を盛り込んだ。 被災地では「セントラルキッチン方式」を採用し、調理拠点から周辺10カ所程度の避難所へ車載用保温庫で配送。調理人は飲食店従業員らを、配送人は運送ドライバーらを1日当たり各5人程度、地元で雇用、生業の維持にも貢献する。ガイドラインで自治体に地元飲食業組合などと事前協定を結ぶよう求める。 また、これと別に政府はキッチンカーやトレーラーハウスなどの災害対応車両を登録しておくデータベースも構築する。 政府は避難所の環境について、難民や被災者支援の国際指標「スフィア基準」を参考とするが、発災直後の達成は難しい。同基準には「温かい食事」の規定はなく、政府は食事面での「基準以上」を実現し、取り組みの象徴としたい考えだ。 ■スフィア基準 紛争や災害の被害者が尊厳のある生活を送ることを目的に定められた基準。「人道憲章と人道対応に関する最低基準」の通称。1997年に国際NGOなどによる「スフィアプロジェクト」で策定された。トイレの数は20人に1個以上で女性用は男性用の3倍、1人当たり3・5平方メートル超の居住空間があることなどの基準がある。