「夫の億単位の借金がかさみ、娘の学費に影響も」安藤和津 人生初の土下座と子育てで守り抜いたこと
3分とか5分とかの本当に短い時間なのですが、できるだけ毎日、そういう濃密な時間を意識してつくったことはよかったなと思いますね。時間の長さではなく、密度が大切だと思うんです。 地方出張のときは必ずメッセージを書き置きをして、その地方の野の花を摘んできたり、や駅弁をお土産にしたりしていました。どれも豪華なものではまったくありませんが、「お母さんがいない時間」の空白を埋められる何かを必ず用意してあげよう、という気持ちでいました。
── 最近は孫育てにもお忙しそうですが、これから先の人生でどんなことを楽しみたいですか。 安藤さん:私の人生は家族ファーストの人生でした。子育てに約20年、並行して母の介護に12年。その間はずっと自分のために生きられなかったし、娘たちが幼い頃は仕事の大きなチャンスも2回見送りました。 ひとつは朝の帯番組のワイドショーのメインMCのご依頼、もうひとつは出馬要請です。どちらも本当はやってみたかったんです。父が政治家でしたから政治には興味があったし、声を挙げたい気持ちもあったんです。
でも、私がすべてを放り出してその依頼を受けてしまったら、家庭が崩壊することもわかっていたので諦めました。諦めたことを後悔はしていないし、自分が犠牲になったとも思っていません。今、娘たちが仕事で活躍できるのは、私が子育てを頑張った結果でもあると思っているし、そのおかげで人生に楽しみを増やしてもらえましたからね。 それに私もちょっとは成長したんですよ。以前は子どもや孫を前にすると、自分の好物であっても「どうぞ食べて」と譲っていましたが、今は「バァバはこれが好きだから、これはちょうだい!」と孫相手にも言えるようになりました(笑)。
奥田も今は最高のジィジになって、孫たちもジィジが大好き。この数年はお皿洗いも手伝ってくれるし、人生後半やっと人生を共に過ごしてよかったと思えるようになりました。いろいろなことを乗り越えられたのも、全て自分で選んだ人生だからだと思うんです。自分の心に正直に生きるって大事かも。 今の時代の女性たちに伝えたいことは、自分の中で本当に大事にしたいものを見極めることです。それはきっと時代が変わっても普遍的なことですよね。そのうえで、自分に自信を持って楽しく自由に生きられる女性がもっと増えたらいいなと心から願っています。
PROFILE 安藤和津さん 1948年、東京都出身。学習院初等科から高等科、上智大学を経て、イギリスへ2年間留学。CNNのメインキャスターを務める。1979年、俳優・映画監督の奥田瑛二さんと結婚。長女は映画監督の安藤桃子、次女は俳優の安藤サクラ。エッセイスト、コメンテーターなど幅広い分野で活躍中。 取材・文/阿部花恵 写真提供/安藤和津
阿部花恵