「夫の億単位の借金がかさみ、娘の学費に影響も」安藤和津 人生初の土下座と子育てで守り抜いたこと
── 並行して認知症を患ったお母さまの介護も大変だったそうですね。 安藤さん:母は脳腫瘍が原因の老人性うつ病と認知症でした。最初は母の言動がおかしくなってしまった原因がわからなかったんです。医師ですらまだ認知症というものを理解していなかった時代で、介護制度のシステムもスタートしたばかり。今のようには整っていなかったし、専門知識やプロ意識が薄いヘルパーさんも少なくありませんでした。 母を指さして「このばあさんがさ~」と目の前で平気で悪口を言われたこともあります。それでも介護福祉士の資格を持っているヘルパーさんと出会い、一生懸命リハビリを続けて、認知症の症状もちょっとだけ改善されて字を書けるようになった矢先、他のヘルパーさんのミスでの転倒がきっかけで寝たきりに。結局、約12年間の介護生活の末に、母は83歳で亡くなりました。
── 約12年間の長い介護の日々はご苦労も多かったはずです。娘としては十二分に尽くされたと思いますが。 安藤さん:いいえ、たりていません。まったくたりていないと思う。1分1秒でも長く生きてほしいと願ったのは私のエゴに過ぎなくて、母本人は寝たきりの会話もできない状態で、あんなに長くは生きたくなかったのかもしれない。健康によくないから、と食べたいものを取り上げずに、食べさせてあげればよかった。そんな後悔がいまだに残っています。
だから娘たちには、私が認知症になっても、「体によくないからダメ」とは絶対に言わないで、好きなものは思いっきり食べさせて。お酒も好きに飲ませてほしいし、外にも遊びに行かせてほしいと頼んでいます。
■子育てで守り抜いたこと ── 子育てについても教えてください。長女の桃子さんは映画監督に、次女のサクラさんは俳優にと、皆さんがそれぞれのステージで活躍する芸能一家となりましたが、子育てにおいて大切にしていたことはありますか。
安藤さん:私は仕事で地方出張も多かったため、専業主婦のお母さんと比べたら一緒に過ごせる時間が少なかったと思います。帰宅したらしたで家事もやらなきゃいけない。 だからこそ心がけていたのは、長女と私、次女と私と、それぞれとのふたりきりの時間を必ずつくること。1対1で隣の部屋に入って抱っこして、「今日はどうだった?」「何かおもしろいことはあった?」と、なんでもない会話をして「あなたが一番大好きだよ」とギューッと抱きしめる。