辰巳琢郎、ハマり役の浅見光彦は「ある意味役作りをしなかった」 読者に選ばれ出演オファー「なるほど僕の役だ」
父娘共演のワインイベントも
2024年1月にはバロック音楽劇『ヴィヴァルディ-四季-』に主演。この舞台は、天才作曲家アントニオ・ヴィヴァルディ(高田翔)を育てた父のジョヴァンニ・ヴィヴァルディ(辰巳琢郎)の栄光と挫折を、誰もが知る代表曲『四季』に乗せてカフェに集う人々との触れ合いとともに描いたもの。 長女の辰巳真理恵さんはオペラ歌手。実生活でも音楽家の父であり、ジョヴァンニとオーバーラップする。 「この1年は舞台をいっぱいやりました。舞台はおもしろいですね。ひとつのカンパニーで、舞台上では絡みがなくても稽古場でみんな会うわけじゃないですか。そこがいいところ。僕は劇団上がりだし、演劇人だと思っています。ですからみんなでひとつのものを作り上げるという作業が、好きというか、しっくりくるんですよ」 4月26日(金)~5月2日(木)に舞台『ワインガールズ』(シアター1010)の公演が行われる。長野県塩尻市にある全国で唯一ワイン造りを学べる志学館高校をモデルにした小説の舞台化。3人の女子高生たちの恋と友情、ワイン醸造への情熱を描いた作品。 「僕は校長先生の役なんです。日本ワインが題材の舞台なら、やらざるを得ないでしょ。女の子3人が中心の話なんですけど、さまざまなバックボーンがある彼女たちを裏から支える。脇ではありますが大切な役です。 実はまだ稽古が始まったばかり。良い作品にしますので見に来てくださいね! 北千住でお待ちしています」 ――近畿大学の教授もされているのですね。 「そうです。客員教授なんですけど、結構長いんですよね。定年もないみたいなので」 ――コロナの間はオンラインですか? 「オンラインはまったくやっていません。アナログ人間なもので…。コロナがどんな病気かわからず、緊急事態宣言が出たときに、4月と5月だけ休んで、あとはずっと対面でやっていました。週に1回の授業なんです。でも『劇団そとばこまち』の現座長の坂田大地くんに手伝ってもらっていて、仕事で休んでも彼が一人でやってくれる、万全の体制です」 ――通うのが大変そうですね。 「片道4時間ですが、年をとるとあっという間ですよ。で、たいてい大阪か京都か奈良に一泊しますから、それほど大変じゃないんです。学生たちに会うと元気ももらえますし…。 今年3月に卒業するのが、ちょうどコロナの始まったときに入学した連中なんですよ。彼らは2年間ほどほとんど大学に行けなかった。それは可哀想だから、とにかく僕の授業はやります。リモートでできる授業じゃありませんから、ぜひやらせてくださいって申し出たら、大学側は喜んでくれて。 そのときの新入生たちは、リモート授業ばかりで、『大学に来るのは辰巳先生の授業だけです』って。泣けました。僕の授業で会った人しか大学の友だちはいないって。 学生たちは、大学に行きたい気持ちはすごくあったみたいなんですが、親が心配して行かせてくれないなんて話も聞きました。あと、年配の先生たちはやはり恐いから大学に行きたがらない、学生に会いたがらない。仕方なかったとは思います。本当にひどい状況でしたね。 そういう学生たちが、この春卒業していきます。差別しちゃいけないけど、やっぱり一番可愛いですよね。2回生になっても3回生になっても、単位はもらえないのに、僕の授業に来てくれるんです。手伝いに来てくれたり、時には後輩の指導もしてくれます。 ここ数年やっているのは、実は『人狼ゲーム』の舞台化なんです。演劇を教育にとり入れています。クラブ活動のような感じでしょうか。若い人たちと一緒にいる時間は、自分でもいろんな刺激も受けるし楽しい。そういう現場は持っておきたい。仕事として考えたことはありませんね(笑)」 ――学生さんたちもいい思い出になったでしょうね。お嬢さんの真理恵さんと一緒にお仕事をされることはありますか? 「あります、ときどき。声楽家というのは、30過ぎてようやく声ができあがる、みたいな気の長い仕事。逆に言うと、芸能界のように10代や20代じゃないと売り出してもらえない世界じゃあないので、そういう意味では、じっくりと取り組めていいのかなと思います。その分、ずっとスネをかじられていますが。 クラシックとオペラはワインと相性がいいので、彼女が歌って、僕がワインや食事を全部演出するみたいな会が増えてきました。今年は9月21日(土)にサントリーホールの『ブルーローズ』で、6年目の辰巳真理恵ソプラノリサイタルがあるのですが、僕も出演することになりました。僕が語りと演出をする『椿姫』のダイジェストもありますのでお楽しみに!」 ワインのイベントも多数企画・プロデュースしている辰巳さん。レギュラー番組のロケ、舞台、大学での授業…多忙な日々が続く。(津島令子) ヘアメイク:釣谷ゆうき