映画「Team その子」から学ぶ解離性同一性障害。困難への理解、深めて
今後の上映会+トークは9月16日に新潟県長岡市、23日に仙台市、11月4日には新潟市で予定されている。詳細は映画『Teamその子』公式ホームページから確認できる。 × × DIDとはどのような病気で、どんな治療方法があるのか。元東京女子大教授で、「陽だまりクリニック美しが丘」医師の柴山雅俊さん(精神病理学)に聞いた。 ▽バラバラになる トラウマやストレスなどの影響で、記憶や意識などをまとめる機能が破綻し、「私」がバラバラになる「解離性障害」の症状の一つがDIDです。解離性障害には、主に次のような症状があります。 ・自分が切り離されている感覚(離人感) ・トラウマやストレスに関連した情報を思い出せない(健忘) ・知らぬ間に遠く離れたところに行く(遁走) ・1人の人間の中に、全く別の複数の人格が現れる(DID) DIDは人格が二つか、それ以上、区別できる状態で存在し、その間の記憶のつながりがない状態。親からの虐待、いじめや性的被害に遭ったりなど「トラウマ」によって生じます。診察の経験では、解離性障害の患者の1~2割ほどがDIDを抱えているようです。 ▽自分を守るための手段
力も立場も弱い子どもたちのように、予期できない他者の怒りや、虐待によって自由を奪われる人がいます。そうした人々の中には、自分の体験を他人事にして処理する人がいます。自分の中で抱えきれないので人格を切り離す。いわば自分を守るための手段です。 虐待の場合、加害者に「所有物」のように扱われ、特に性的虐待は恥や罪悪感まで押しつけられてしまいます。被害者は「自分のせいだ」とさえ考えてしまいますが、そういう時、切り離された人格が本人の「身代わり」として苦痛を受け止めています。 交代人格が本人や主人格に対し、「しっかりしろ」「死んでしまえ」などと迫り、迫害的になることがあります。しかし本来、彼らはトラウマの身代わりで、「守護者」でもあるので、つながることが大切です。このつながりこそ、回復のために大事なことです。 ▽段階的な治療 DIDは段階的な治療が重要。虐待の加害者と一緒に暮らしている状況では、回復が困難です。そこに距離を持ち込むことが必要です。まずは安全、安心の居場所を確立することです。