あなたの年金給付額はどうなる? 「サラリーマンが損をする」は本当? 年金制度改革で知らないと損をするポイント
マクロ経済スライドの“目標”
マクロ経済スライドが続くうちは年金の支給額が低く抑えられるが、その措置はいつまでも続くわけではない。そこには“目標”が定められている。 「マクロ経済スライドの一つの到達点は、年金の所得代替率を現在の61.7%(19年)から50%にまで低下させることです。所得代替率とは、年金の額が現役世代の手取り収入(ボーナス込み)の何%か、という数字です。年金制度は『100年安心』をうたっていますが、所得代替率が50%まで下がれば、今後100年にわたって、額はどうあれ、年金を給付し続けることができるだろう……ということなのです」(北村氏)
自営業者や専業主婦が困窮する事態を避けるために……
“目標達成”のめどはついているのか? 「厚生年金では26年度、国民年金では57年度までマクロ経済スライドで抑制を続ければ、所得代替率を年金制度が持続可能なラインまで持っていける、というのがこれまでの予定でした」 北村氏はそう説明する。 「とはいえ、この予定でいくと国民年金は抑制の期間が長く、現状より3~4割も受給額が減ってしまうという試算が出ています。それだと、国民年金のみに加入している自営業の人や専業主婦などが困窮してしまいます。そうした事態を避けるため、厚生年金と国民年金の抑制終了時期を36年度で一致させようとしているのです」(同) それにより、基礎年金の給付水準を3割底上げしよう、というのが今回の改革の主旨だ。しかし、基礎年金の抑制終了時期を21年も前倒しするためには何らかの措置が必要。具体的には、厚生年金の積立金の一部を基礎年金の給付に振り向ける案が検討されている。
「サラリーマンは損をする」は正しい?
年金は、主に現役世代が支払う保険料で高齢者世代への支給を賄う「賦課方式」が取られており、これまでに余った分は積立金として年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が運用。23年度の積立金は厚生年金が約243兆円、国民年金は約12兆円となっている。 「女性の社会進出や『106万円の壁』の撤廃などで、厚生年金の加入者は増加が続いていくと見込まれています。一方、国民年金は学生や低所得者など、納付できていない人も少なくない。実質納付率は4割程度です。財政的には厚生年金の方に余裕があるのは事実です」(北村氏) とはいえ、厚生年金の積立金を国民年金の給付に充てれば、「なぜサラリーマンが自営業者を助けなければならないのか」との声が上がるのは当然である。 「そうした批判は一面ではあたっていると思います。しかし、国民年金は厚生年金加入者ももらうわけですから、トータルで損をする人はごく一部。それは厚労省も言っていますし、その通りなのです」(同)