「バルサでは泣きながら帰宅する毎日だった」クラブ、監督、メディア、ファンのいずれにも見放された19歳FWが“理想の環境”を求めてベティスへ!
嘲笑の的にすらされていたストライカーが、新天地では大歓迎されている。今夏にバルセロナからベティスに移籍したブラジル代表FW、ヴィトール・ロッキのことだ。 【動画】ベティスのファンやチームメイトから熱い歓迎を受けるヴィトール・ロッキ 2024-2025シーズンから本格的に働いてもらうための試運転の期間を設けるという理由で、半年前倒ししてバルサに加入したのは今年1月。しかしその実、昨シーズンの成績は、公式戦出場16試合、スタメン起用2試合、得点は2、プレータイムの合計は353分と寂しい数字が並んだ。スペイン紙『エル・パイス』によると、本人は「パフォーマンス自体は悪くない」と考えていたとのことだが、起用法を見るかぎり、早々に前監督のシャビから失格の烙印を押されていたのは明らかだ。 とはいえ、バルサ加入時はまだ18歳だった若者だ。もともとブラジル人選手は、新たな環境への適応に時間を要する傾向があり、しかもロッキは、繊細さよりもアグレッシブさで勝負するバルサには馴染みの薄いタイプのFWだ。いきなり結果を求めるのは酷だったが、刹那主義に陥っているバルサの環境がそれを許さなかった。 スペイン紙『スポルト』は「近年で最も残念な補強のひとつ」と一刀両断し、クラブは「もう同じ過ちは繰り返さない」と勇んでもいるが、結局はクラブも、シャビも、メディアも、ファンも、ロッキが必要としていた忍耐を持ちえなかった。それはハンジ・フリックに指揮官が交代した後も変わらず、アメリカ遠征でインパクトを残せなかったことが決定打となって、再び失格の烙印を押され、新天地探しが始まった。 退団する際の移籍形態についても、議論の対象になった。市場価値が高いうちにロッキ獲得に要した費用(4000万ユーロ)を回収したほうがいいとする売却積極派と、レンタルで様子を見てからという慎重派に意見は真っ二つに割れた。結局、スポルティング(ポルトガル)から3000万ユーロ近いオファーが届いたという不確かな情報が駆け巡る中、「ラ・リーガに残りたい」というロッキの強い意思と、クラブOBでレジェンドのホアキン・サンチェスまでが説得役として駆り出した熱意が実り、ベティスへのレンタル移籍が決まった。 スペイン紙『エル・パイス』によると、契約期間は2025年6月30日までで、さらに1年間の契約延長オプションおよび買い取りオプションが付帯し、レンタル料の支払いはない。また、350万ユーロの年俸はベティスが負担することで話がまとまったようだ。 ロッキにとって好都合なのは、ベティスが開幕から2試合連続でサイドが本業のアイトール・ルイバルをCFで起用している事実が示すように、ポジションが空いていること。今夏にボルハ・イグレシアスとウィリアン・ジョゼを放出したことで、現時点でCFを担えるのは、右足を手術し、10月頃の復帰を目指してリハビリに励んでいるセドリク・バカンブ、近年サイドでの起用が増えているチミ・アビラとフアンミぐらいしか見当たらない。ロッキにとっては、イスコら中盤に優秀なパサーが揃っている点も含めて、実力を証明するには“理想の環境”と言える。 ベティスは近年、守備的MFのジョニー・カルドーゾ(インテルナシオナルから)のような逸材を獲得しているように、ブラジルに太いパイプを持っているクラブとして知られている。おそらくロッキのことも、早い時点からマークしていただろうことは想像に難くない。それがバルサの稚拙なマネジメントに乗じて、格安で手に入ったのだから、笑いが止まらないはずだ。 『エル・パイス』が伝えたところによると、バルサ時代はかなり精神的に追い込まれ、「練習を終えると泣きながら帰宅する毎日だった」というロッキ。本当の勝負はこれからだ。 文●下村正幸
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