【ドルアーガの塔】『バビロニアン・キャッスル・サーガ』がめちゃくちゃ好きなので語りたい。いま遊んでもおもしろい、ギルとカイの冒険譚をジェットブーツ並の駆け足で解説する
最初に断っておくが、本稿はPR記事ではない。40周年を迎えた『ドルアーガの塔』が好きすぎる筆者が、皆さんにそのシリーズである『バビロニアン・キャッスル・サーガ』の魅力を知ってほしいがために執筆している。 【記事の画像(27枚)を見る】 「『ドルアーガの塔』は聞いたことあるけど……バビロニアンなんちゃらって?」: こういう人もいるかと思うので、ざっくり説明しておこう。10分でわかるから、興味ない方も我慢して目を通してほしい。 『バビロニアン・キャッスル・サーガ』の物語とは…… 要約するとこうだ。 1.塔を上って(カイの冒険) 2.助けに行って(ドルアーガの塔) 3.塔から出て(イシターの復活) 4.ロッドを返す(ザ ブルークリスタルロッド) ざっくり過ぎて10分どころか5秒で終わってしまった。ゲームの発売日順で言えばアーケードゲームの『ドルアーガの塔』(1984年)が最初だが、時系列では1988年にファミコン版が発売された『カイの冒険』が先となる。 派生作品もいくつかあるが、おもにこの4作品が『バビロニアン・キャッスル・サーガ』と呼ばれている。響きがカッコいいので声に出したい。 『ドルアーガの塔』は決して難しくはない。現代ならカジュアルに楽しめる良作 ここからは、『バビロニアン・キャッスル・サーガ』のどこがすばらしいかを語っていく。もうちょっとだけ話に付き合ってほしい。 第1作であるアクションゲーム『ドルアーガの塔』の登場は1984年。当時のゲームはストーリーが皆無なものが多く、あっても「敵が攻めてきたので倒せ」とか「〇〇を助けろ」といったものがほとんど。しかしナムコ(現バンダイナムコエンターテインメント)は『ゼビウス』(1983年にアーケード版が稼動開始)を筆頭に、異様なほど世界設定にこだわったゲームを数多く作っていたと思う。 1984年ということはまだ『ドラゴンクエスト』も出ておらず、RPGというジャンルが世間に浸透していなかった時代。主人公である騎士・ギルが囚われた巫女・カイを助け、奪われたロッドを取り返しに行くという物語や設定が練り込まれていた。塔を登りつつブーツや剣といった装備やアイテムを入手し、成長していくシステムは当時としては唯一無二。 ついでに言うとぷるぷるしたかわいいスライムも筆者の知る限り本作が初で、ものすごい発明だと思った。当時想像できた“スライム”はバケツみたいな容器に入ったドロドロしたおもちゃだったし。まさにエポックメイキングの塊。 当時の『ドルアーガの塔』ポスター(の復刻版)。2頭身のかわいいキャラやアメコミ調のデザインに目が行く。右上の塔はなんと模型の実写。 そんなすばらしい『ドルアーガの塔』だが、「詳しくは知らないけど難しいゲームなんだよね?」という先入観をお持ちの方もいるのでは? 確かに宝箱の出現条件が複雑で難解な一面もあるが、それはあくまでインターネットも攻略本もなかった当時ならではの難しさだ。いまなら決して無理ゲーということはない。 なお、アーケードアーカイブス版『ドルアーガの塔』ではプレイ中に宝箱の出現条件を見ることもできる。じつは筆者も2023年に生涯初めてクリアーできたばかり。「いまさら……」と恥ずかしがらずにぜひ挑戦してほしい。何なら中断セーブを駆使したっていい。60階を踏破できたときの達成感は何物にも代えがたいのだから、皆さんも挑戦してほしい。 なお、『アーケードアーカイブス ドルアーガの塔』は2025年1月6日まで30%OFFのセール中。ただでさえ安いのに大盤振る舞いすぎる。持ってない人は全員買え。 作品ごとにシステムがまったく異なる。派生作品それぞれの個性 まずい。『ドルアーガの塔』だけで話が止まらなくなりそうだ。ここからはシリーズ作品の魅力について説明していく。駆け足で。 イシターの復活(アーケード/1986年) 『ドルアーガの塔』でカイを救出し、ブルークリスタルロッドも奪還したギル。ここで物語はめでたしめでたし……とはならず、2作目の『イシターの復活』で塔を脱出するまでが描かれる。「そんなの来た道を戻るだけでは? ドルアーガもやっつけたのなら簡単でしょ?」と思う人もいるかもしれないが、ドルアーガは強大な悪魔で、その魔力を失った塔は廃墟と化し、塔の中はますます複雑になってしまうのだ。しかもモンスターがより凶暴になるおまけつき。もうこうなると「家に帰るまでが冒険です」どころの話ではなく、生き残りを懸けた大冒険となる。この発想、天才か。 冒険をしているのはギルとカイだけではない。本作はアーケードゲームでありながら、パスワード保存形式のRPG風作品となっている。国内でRPGがブームになり始めた時代に、ものすごく思い切ったことをしている。ナムコもまた冒険家だ。 ちなみに本作もアーケードアーカイブス版が配信中。プレイ中にマップが見られたり、パスワードがワンタッチで保存できたりと至れり尽くせりな仕様なので全員買え。筆者のほぼ最強パスワードを使っていいから。 カイはFEMALE(名前はDDO)、ギルはMALE(名前はIZU)で入力してね。 カイの冒険(ファミリーコンピュータ/1986年) ここまで駆け足で説明してきたが、いくつか疑問が出てきたのではないか? それらの疑問は3作目『カイの冒険』がだいたい解決してくれる。なお1、2作目はアーケードゲームだったが、本作はファミコンでリリースされた。 ブルークリスタルロッドって何? 『バビロニアン・キャッスル・サーガ』でもっとも重要なアイテム。このロッドが放つ青い輝きは、永遠の繁栄を豊かな実りをもたらしてくれるのだとか。でも、それを悪用しようとする者が現れるのも必然の流れ。こんなものがあるなら筆者だって欲しい。 さっそくスーマール帝国という国が攻め込んで来た。“帝国”ってどの作品でもだいたいろくでもないよね。 ドルアーガは何者? ドルアーガは手が8本、足が4本もある悪の権化。ブルークリスタルロッドはコイツを封じ込めることでも役立っていたので、それが奪われたことで復活を果たした。それもこれも帝国のせい。ともあれ、女神イシターのお告げによって巫女であるカイがロッドを取り返しに行くことになる。 思えばこの時点でギルを同行させればよかったのでは? 本作は『メジャーハボック』(※)を彷彿とさせる、サイドビューのアクションゲームだ。ぼちぼち気付いた方もいると思うが、シリーズ作品ひとつひとつがまったく違うシステムのゲームになっている。何らかの理由があるのだろうが「前作のシステムをそのまま流用したろ!」とはせず新たな遊びを創造し続けたナムコ、恐るべし。 ※『MAJOR HAVOC』(1983年稼動開始)。アタリ社製のアーケードゲーム。 なお『カイの冒険』はNintendo Switchの『ナムコットコレクション』でプレイできるほか、アーケードに逆輸入した『VS. カイの冒険』もアーケードアーカイブスで発売中だ。どっちでもいいから全員買え。 ザ・ブルークリスタルロッド(1994年/スーパーファミコン) 最終章となる4作目は何とアドベンチャーゲーム。本作でギルとカイの冒険は結末を迎えるのだが、ひと言で説明することはできない。なぜなら本作がマルチエンディング形式だからだ。しかも結末のパターンは48通り! マジか。 『ザ・ブルークリスタルロッド』のパッケージと説明書の一部。あいかわらず絵がかわいい。 プレイヤーの選択によって物語が大きく変化するとはいえ目的はある。それはブルークリスタルロッドを天上界へ返すことだ。ところが天上界は簡単に行ける場所ではないので、方法を捜して灼熱のサバクやスーマール帝国などさまざまな場所を旅することになる。 どんな結末が用意されているのか気になる方は多いだろう。これも「全員買え」と言いたいところだが、残念なことに現行のプラットフォームで遊ぶ手段は存在しない。いつの日か復刻されることを願って、気長に待つしかないだろう。 オンラインゲームやアニメ、アトラクションにもなった 『ドルアーガの塔』はシリーズ4作品だけでなく、さまざまなマルチメディア展開も行われた。1980年代にはゲームブックやボードゲームも発売され、国際花と緑の博覧会(1990年)やテーマパークであるナムコ・ワンダーエッグ(1992年~2000年)には『ドルアーガの塔』のアトラクションが設置された。 2008年に放映されたテレビアニメ『ドルアーガの塔』では、作中で登場人物がテーブル筐体に入ったアーケード版1作目をプレイするシーンも。また、同年にはPC用のオンラインRPG『ドルアーガの塔~the Phantom of GILGAMESH~』もサービスを開始した(現在はサービス終了)。 40周年記念企画が続々! もっと知りたいならこちらをチェック 冒頭に書いた通り本稿はPR記事ではないが、『ドルアーガの塔』40周年を記念した公式記録全集が受注販売中。豪華な内容なだけにお値段は27500円[税込]と高価だが、ここまで『バビロニアン・キャッスル・サーガ』の知識を網羅した書物は今後おそらく出ないと思うので、声を大にして言いたい。「全員買え」と。 語りたいことが多すぎて音楽のことにまったく触れなかった。本シリーズ作のBGMはどれもすばらしいのだ。公式記録全集に付属するサウンドCDだけでも無限にご飯が食べられる。 さらなる朗報として、2011年にフィーチャーフォン向けにリリースされた『ドルアーガの迷宮』という外伝的作品をWindows向けに復刻した特典CDまで付いてくるとのこと。こんなのもう買うしかないじゃん。さあ買え。いますぐ買え。 そしてアソビストアおよびゲーム文化保存研究所では、マトリックス代表取締役で伝説の『ゼビウス』プレイヤーでもある大堀康祐氏を筆頭に、錚々たるメンバーによる“ドルアーガのコラム”が掲載中。2025年1月6日(予定)ではさらに更新され、元週刊ファミ通編集者のみさいル小野氏も参加するとのことなので要チェックだ。 記事内の『ドルアーガの塔』と『イシターの復活』の画面はアーケードアーカイブス版、カイの冒険の画面はナムコットコレクション版のものです。