長友佑都は再び輝けるのか
ジャマイカ代表戦の後半終了間際に長友との交代で途中出場し、舞台をシンガポールに移して行われた10月14日のブラジル代表戦では左サイドバックとして先発フル出場した左利きの太田宏介(FC東京)も、自身の左足に宿る武器に絶対の自信を寄せている。 「クロスの質とキックのバリエーションは、自分の中でもかなり自信を持っている。(長友さんと)比べるというか、自分独自のものだと思っているので」。 人間である以上は、いつかはフィジカル面が現状維持から下り坂に転じる。4年後のワールドカップ・ロシア大会を32歳で迎える長友にとっては、逆にいま現在こそが新たな武器を心身両面に搭載する絶好のチャンスでもある。前出の水沼氏が続ける。 「1対1を仕掛けることが長友の中でどれだけの美学になっているのかはわからないけれども、味方にパスを出してからスペースへ走ってもう一回受ける、といったプレーも見直してみてはどうなのかなと思う。現状では、1対1で相手を抜くことにステータスを感じている部分があるような気がする。それが長友の武器でもあるわけだけれども、自分がやらなきゃいけない、自分はこうなんだという思いがちょっと強すぎるのではと感じるときもある。長友の責任感の強さは誰もがよくわかっている。それでも頭の中をちょっと整理して、チームの中でひとつの駒のような役割を果たせばいいと考えるだけで、メンタル的にもかなり楽になるはずだと思う」。 インテルでは10月下旬、会長職を18年間務め、選手やサポーターから「父」と慕われたマッシモ・モラッティ名誉会長やその息子たちがクラブを去り、現在の経営陣も辞任することが発表された。昨年11月にインテルを買収し、モラッティ氏に代わって会長に就任したインドネシアの実業家、エリック・トヒル氏の下でセリエAの中位にあえいでいるマッツァーリ監督の解任論も何度か飛び交っている。 国際Aマッチ期間中は各国のトップリーグも中断される。インテルも9日にヴェローナをホームに迎えた後は、23日のACミランとのダービーまで日程が空く。この間にピッチ外の雑音を忘れ去り、心身に新たなエネルギーを注入し、クロスのバリエーションなどの武器を増やすヒントを得られるとしたら、アギーレジャパンからの一時的な落選は長友が復活を果たすためのターニングポイントとなるかもしれない。 (文責・藤江直人/スポーツライター)