長友佑都は再び輝けるのか
右ひざの半月板を損傷して手術を受け、戦列復帰までに半年以上の時間を要した盟友の本田圭佑(当時CSKAモスクワ)のケースも、ワールドカップ・ブラジル大会まで残り1年あまりという時期を考えれば、長友の脳裏には大きなリスクと映ったのかもしれない。 アルベルト・ザッケローニ前監督の下で戦ったその後の代表戦でも、左ひざを気にするシーンを幾度となく目にしている。いま現在も左ひざの故障あるいは違和感を引きずっているのならば、より高く跳ぶためにも一度かがむ、つまり万全なコンディションに戻すことを何よりも優先させるべきだろう。 ワールドカップ・ブラジル大会の直前には、サプライズで代表入りを果たしたFW大久保嘉人(川崎フロンターレ)と長友との間でかわされたやり取りが伝わってきた。 大久保「クロスが全部同じ。速いボールなども混ぜたらどうか」。 長友「中に入ってくる選手がタイミングを極めれば、絶対に点は取れる」。 実際問題として、長友が左サイドから上げるクロスからはゴールが生まれなくなって久しい。右利きの左サイドバックゆえに、利き足ではない左足から放たれるクロスの大半が山なりで、正確性を欠く場合が残念ながら少なくない。インテルでは個の能力に長けたFW陣がゴールに結びつけてくれるが、日本代表ならばピンポイントか、あるいは相手の裏や弱点を突くための創意工夫が求められる。 左タッチライン際からではなく、ペナルティーエリアの間近にまで侵入してクロスを送る機会も少ない。味方との距離が縮まれば、必然的にコントールは増す。創意工夫とはブラジルの地で右サイドバックの内田篤人(シャルケ)が幾度となく実践していたグラウンダーや低空での高速クロスであり、大久保もその点を長友に求めたのだろう。しかしながら、長友と味方との距離はいまだ遠いと言わざるを得ない。 指揮を執って2シーズン目となるインテルのワルテル・マッツァーリ監督が新加入のドドを重宝する最大の理由は、22歳の若武者が左利きである点に他ならない。左サイドでドドが利き足を自在に操ることで攻撃のバリエーションが増し、状況によっては対面の相手を抜き切る前にアーリークロスを、ゴールに近づくにつれてGKから逃げていく「巻いた」軌道で放つことも可能になる。