「全固体電池」日本に強み…特許出願動向調査で分かったこと
パッシブZEH・ZEB、太陽光一体型建材、巻き返し期待
「ZEH」「ZEB」は、それぞれ「ゼロ・エネルギー・ハウス」「ゼロ・エネルギー・ビル」の略で、年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指す住宅・建築物を指す。外皮の断熱などのパッシブ技術を調査対象とした。国際展開発明件数は欧州籍が48・5%と約半分を占める。ただし、中国籍の出願のうち国内向けが97%を占めるなど、同テーマでは法規制や気候特性などへの対応から自国籍による出願が大半。出願人をみても各社の件数に大幅な偏りがみられない一方、上位20社中に日本企業6社が含まれるなど活躍がみられる。 「太陽光発電モジュールの支持構造」の技術区分では取り付け架台に関する発明で日本国籍が中国籍に次いで多数出願している。一方、太陽光電池モジュール一体化建材は日米欧中韓国籍の中で日本国籍が最少件数。太陽光電池と一体型の建材はZEHの普及を追い風に市場拡大が見込まれ、日本企業による巻き返しが期待される。
ドローン、農業・物流・点検分野で積極展開
飛行ロボット(ドローン)関連の技術、用途、課題の三つの軸から分析した。国際展開発明件数では、17―21年に1042件の出願を行ったDJIを擁する中国籍の出願比率が42・7%を占める。日本国籍は11・1%にとどまるものの、出願人の上位3社に農業用ドローンの設計開発・製造を手がけるナイルワークス(東京都千代田区)が入るなど日本企業の活躍もみられる。 技術区分別でも全区分で中国籍の件数が1位を占めることから、中国企業が積極的な技術開発を展開していることが示された。 日本では近年、農林水産業や物流搬送・点検など産業課題解決につながる分野での積極的な出願がみられるという。「調査を通じて存在感の向上が期待される分野が複数みられた」(特許庁)とし、ドローンの社会実装の加速に伴う、日本企業の展開積極化が期待される。
ヘルスケアインフォマティクス、医用画像で強み発揮
ヘルスケアインフォマティクスは、情報通信技術を駆使し、個人の健康・医療に関する情報を本人や医療従事者などが、モバイル機器などを通じて時間や場所の制約を受けずにやりとりを可能にするもの。調査ではヘルスケアソフトウエア、医療、リハビリテーション、介護などの分野における関連技術を対象にした。 15―21年の国際展開発明件数では全体の34・4%を占める米国籍が先行する。ただ、出願人上位20社のうち日本企業が8社を占めるなど関連技術に対する関心の高さがうかがえる。 技術分野別では近年は世界的に人工知能(AI)・機械学習に関する発明件数が増加傾向にあるが、同分野における日本企業の件数は米国や中国などと比較して少ない。一方、日本勢は画像診断に関する出願が多く、とりわけ放射線診断機器やファイバースコープなどの医用画像分野で日本の強みが発揮されていると分析する。