“処女懐胎”で話題のエイ、珍しい生殖系の病気だった、妊娠の状態は不明
おそらく世界で最も有名なエイの「シャーロット」、米水族館
おそらく世界で最も有名なエイの「シャーロット」が病気にかかっていると、水族館のスタッフが発表した。2024年2月、米ノースカロライナ州ヘンダーソンビルにあるチームECCOの水族館「アクアリウム&シャークラボ」は、ラウンドスティングレイ(Urobatis halleri)のシャーロットが科学的には単為生殖と呼ばれる「処女懐胎」をしていると報告した。しかし、数カ月が経っても子どもが生まれなかったため、このエイに何が起きているのかについて憶測が飛び交っていた。 【動画】背中が膨らんだ状態で水槽の中を泳ぐシャーロット 2024年5月30日、ついに水族館はFacebookに「シャーロットが珍しい生殖器系疾患を発症し、生殖系に悪影響がでている」と投稿した。この結果は「本当に悲しく、予期せぬ医療的な進展です」。シャーロットが妊娠していたかどうかについてはコメントしなかった。 「飼育下のアメリカアカエイ(Hypanus americanus)や別種のアカエイは、特に年をとるにつれて生殖器系疾患を発症するという研究がいくつかあります」と、米カリフォルニア州立大学ロングビーチ校の魚類学者ベンジャミン・パールマン氏はメールで述べている。 「生殖器系疾患の種類によっては、命に関わる場合もあります」
単為生殖は80種以上で記録
妊娠中のエイは背中と側面に子を宿すが、2024年初めにシャーロットが同じ症状を示し始めたとき、水族館のスタッフは困惑した。シャーロットは長年オスのラウンドスティングレイと同じ水槽で過ごしていなかったのだ。 その後、シャーロットが同じ水槽内のオスのサメと交配したのではないかという説が広まった。しかし、エイとサメは交配可能なほど近縁ではなく、物理的に不可能だ。 代わりに、水族館はシャーロットが受精せずに繁殖する単為生殖を初めて示したアカエイだと発表した。多くの小型無脊椎動物や魚類によく見られるこの無性生殖法は、80種以上で記録されている。
生殖器系疾患とは? 妊娠との関係は?
モリス動物財団によれば、子宮肥大、のう胞性卵巣および排卵の停滞が生殖器系疾患の特徴だ。 2019年10月1日付けで学術誌「American Veterinary Medical Association(AVMA)」に掲載された研究により、水族館で飼育されている48匹のアメリカアカエイのうち65%である31匹で「生殖器系疾患が発症中あるいは進行している」ことが明らかになった。対照的に、12匹の野生アカエイおよび管理された礁湖で飼育されている34匹の半野生アカエイでは生殖器系疾患が検出されなかった。 「のう胞性卵巣があると、エイが妊娠していると誤解される可能性があります」とパールマン氏は言う。 パールマン氏はそのような事例を知らないが、「エイはのう胞性卵巣と発育中の胚、そして生殖器系疾患をもちながらも出産できる可能性があるように思えます」と氏は言う。 全体として、いろいろありうるこのような状況では、「信頼できる超音波画像を撮ること」が重要だとパールマン氏は述べる。