映画『インディ・ジョーンズ』が現実に!? 古代都市ペトラで世紀の大発見。考古学者調査が進む
古代都市ペトラ(「新・世界七不思議」の一つ)の砂岩の断崖は、考古学的な名所となってすでに久しい。1989年に日本公開された映画『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』のロケ地として使われて以降、世間の注目は高まるばかりだ。ハリソン・フォード演じるあの考古学者インディアナ・ジョーンズも作中では素晴らしい発見をしたが、今回は現実に、そこで世紀の大発見がなされた。 【写真30枚】“永遠の伊達男”ハリソン・フォードの歩み
この偉大な新発見を成し遂げたのは、考古学者ピアース・ポール・クリーズマン博士が率いる発掘調査隊だ。 アメリカン・センター・オブ・リサーチ(American Center of Research)のエグゼクティブディレクターを務めるクリーズマン博士は、遺跡の地下に隠された新たな墓を探査するため、地中レーダーを使った。過去の発掘記録と、今回のレーダー探査による収集データを比較検証したうえで、ヨルダン政府から実際の発掘許可を取りつけたという。 新たな墓の出現に、調査隊が歓喜したことは言うまでもない。さらに、墓から多数の遺骨や遺品が出土したことで大きな衝撃が走った。過去に発見さた墓のほとんどが、ほぼ空の状態だったからである。 出土した遺骨は全部で12体、うち数体の骨はカビで覆われていた。多孔質の砂岩地帯の墓穴の内部に、頻発する洪水による浸水が起きていたことを示す証拠だ。墓からは青銅器、鉄器、陶器などの遺品も出土したが、その中には『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』に登場するあの「聖杯」を彷彿とさせる陶製の聖杯も交じっていた。「フィクションが歴史によって追認された、そんな素晴らしい瞬間でした」と、ゲイツ氏は興奮を隠さない。
遺品からペトラの謎が解き明かされていく
ペトラの町の玄関口に位置するエル・カズネ(宝物殿)が建てられたのは、少なくとも2000年以上前だと見られている。砂岩の断崖に彫られた荘厳な霊廟(れいびょう)が、この地を訪れる多くの人々を魅了してきた。しかし、墓から出土する物品の少なさから、このモニュメントがいつ造られたものなのか、その年代を測るのは困難とされてきた。 「その時代に生きた人々、そしてこの遺跡そのものについて、より詳しく理解するための手掛かりがずっと求められてきたのです」とクリーズマン博士は言う。「今回、新たな墓から出土した遺骨が、この遺跡の中でも特に重要な位置に埋葬されていたことから、身分の高い人々のものである可能性が高いと考えられます。遺骨はほぼ完全な状態で発見されたため、おそらく埋葬されてからずっと、その場所から動かされずに安置されていたと思われ、その点においても極めて希少性の高い発見と言えるのです」と、博士は続ける。 これらの遺骨や遺品をさらに調査することで、エル・カズネやペトラの周辺、さらには当時この地に暮らしていたナバテア人たちの生活について、より確かな情報が得られる可能性があるという。「彼らが何者であったのかが分かれば、この宝物殿に関する謎のいくつかが解き明かされることになるでしょう」とゲイツ氏も述べている。