ひとり暮らしの高齢者を狙って「無能力者」とみなす…成年後見制度の大問題は、家庭裁判所と自治体の勝手な運用にある
立ち退きさせたいのか
実際はどうだったのか。 「港区の都市開発がらみではないか」との私の質問に、「それは関係ありません」とM氏は首を横に振った。 「3人とも港区長申し立てでしたが、都市開発の話や、店の老朽化に伴う売却話は全然出ていませんでした。3人とも高齢で認知症が進み、家の中が掃除もされず散らかっていたので港区が後見人をつけたのです」(M氏) だがSさんが入手した三男の「年間収支予定表」(M氏が作成し2023年1月12日付けで家裁が受付印を押印)の備考欄には、収支が赤字になる場合に備え、「姉妹らとの共有不動産になるが、不動産の売却や有限会社の清算による現金化の検討が必要である」との記載がみられる。 家裁側が記載したのか、それともM氏が書いたのか不明だが、先の宮内氏は「この記載を見ると、当初から立ち退きのための後見だった可能性が高いと思います」と推測。次のように語る。 「生活費を捻出するために不動産を売却するのはわかります。しかしSさんは会社を継ぎたいと言っていました。若い相続人がいるにもかかわらず、どうして会社まで清算する必要があるのか。 お店を回していた兄弟姉妹3名に法定後見を被せ、それぞれバラバラの施設に入れたのも不自然です。立ち退かせるために港区により後見制度が悪用され、港区に登録している職業後見人が、区の思惑に従い動いているように感じられてなりません」 Sさんも次のように話す。 「M氏の後任の成年後見人であるN弁護士も、昨年の時点で、私に“叔母さんも店を売却したいと言っている。あなたが相続する分も絶対に一緒に売却しないといけない。すでに大手不動産と売却について話をしている”と言っていました。 叔母は常々“絶対に店は売らない”と私に話していたので、“叔母がそんなことを言うわけがない”とN弁護士に回答しました。私が知らないところで不動産売却の話が進められている感じでした」