《大阪・西成ルポ》 「昔はどこでも吸えたけど…」エリア最古の煙草店主が振り返る「西成50年史」
2025年万博開幕に合わせた「市内全面禁煙」の現実味
今回の大阪万博では大きな規制が検討され、その一つに煙草屋としては致命的とも言える、喫煙所問題が浮上している。 大阪市では、万博に向けての取り組みの一つに市内全域での路上喫煙の禁止を掲げ、違反者には1000円の過料が課せられる。大阪市の喫煙率は全国平均の16.6%を上回り17.7%という高い水準であるため、国内外からの観客を見込む大阪では、“見栄え”の美化に必死というわけだ。 しかし、そもそも一定の喫煙率がある場所なら、「禁止」にしたところでしわ寄せが他の場所に行くだけの話。「喫煙所をきちんとつくってくれたらいいんだけどね……」と武井さんが嘆くとおり、大阪市では、万博開始までに140箇所の喫煙所を確保すると息巻いたものの、進捗状況は煙に包まれている。 公道が無理なら私有地。飲食店など、店舗内敷地であれば灰皿の設置は自由だが――今度はそこで喫煙者のマナーが問われているのも事実である。吸い殻や灰を路上に落とす、灰皿自体は私有地でも、喫煙者は道路にはみ出しているといった問題だ。
大阪市環境局の回答は
大阪市環境局に、この喫煙所難民問題をどう考えるのかぶつけると、まずこの「過料」の有効性を強調する。 「過料制度を開始したのは、平成19年です。当初は認知度が低かったこともあって違反者が多く出ましたが、過料の存在が知られるにつれて、徐々に減少しました。今回の市内全面禁煙化も、問題なく対応できると考えています」(大阪市環境局) 喫煙所が足りず、民間私有地での喫煙問題が勃発していることについてはどう捉えているのか。 「実際に、私有地の灰皿によって、結果的に“路上喫煙”が行なわれているという声が寄せられることはあります。店の軒先が狭く、灰皿を置くスペースがギリギリの場所では、人が増えると敷地外の道路に立つしかなくなる人もいます。 ただ、市としては、灰皿の設置場所が明らかに公共道路であれば移設していただきますが、それが私有地であれば、何も言えません。そうした声があることを伝えることはできても、最終的に判断をするのは店側なので……」 なんとも煮えきらない回答。結局のところ大阪市としては、「路上で吸っていたら過料をとる。あとは知らん」スタンスなのである。
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