茎や葉が電気の代わり…光る植物で脱炭素社会の実現目指す
照明を消すと、ポプラの幼木とタバコの苗がほのかに緑色の光を放って暗闇に浮かび上がった。電灯の代わりになると期待される「光る植物」だ。 【画像】研削ロボットの説明をする鉢峰さん(左)と松原教授 奈良県生駒市高山町の奈良先端科学技術大学院大の一室。植物代謝制御研究室の出村拓教授(57)が案内してくれた。目が慣れてくると輪郭がよりくっきり見え、近づけた手が光で照らされた。「茎や葉など植物そのものが『自発光』している証拠です」
大阪市を南北に走る御堂筋を光る街路樹で照らしたい――。「光る植物」は、電気を使わない脱炭素社会の実現を目指し、大阪大産業科学研究所(大阪府)の永井健治教授(56)と出村教授が約5年前から取り組んできた共同研究で、大阪・関西万博に出展する。 永井教授は、光るたんぱく質の研究を続け、高輝度発光たんぱく質「ナノ・ランタン」を開発。さらに光るキノコの発光遺伝子をゼニゴケなどに導入し、自発光する植物の研究を続けてきた。だが、樹木(木本植物)に発光遺伝子を導入するのは、草花(草本植物)と比べて難易度が高い。そこで2019年末、ポプラの遺伝子組み換えで第一人者の出村教授に白羽の矢を立てた。 出村教授はポプラの葉や茎の細胞に発光遺伝子を導入。試行錯誤の末、約2年後の22年1月、細胞の塊の中から芽のようなものが出た状態で発光させることに成功した。「シャーレの上で光っている姿は忘れられない。希望の一歩の瞬間だった」と永井教授。 さらに明るく、大きく成長させ、赤や青などさまざまな色に光らせる研究を続ける。光る植物を商品化する共同の会社「LEP」も設立。万博には4月21~28日に出展する計画で、大阪の産官学でつくる「大阪ヘルスケアパビリオン」のスペースに暗室を設け、植物の細胞や花がほのかに光っている様子を見てもらう。 「我々の技術を世界に知ってもらうまたとないチャンス」と、2人は声をそろえる。「光る植物は電気を極力使わず、地球の健康を取り戻すための技術です」