『墓泥棒と失われた女神』に覚えた“懐かしさ” エンディングに詰まった最高の幸福のかたち
ジョシュ・オコナーが体現する“報われなさ”
主人公を逆さまで撮ってみたり、カメラも16ミリから35ミリまでの3種類を使い分けていたり、異なる質感の映像が絶えず頭の中に届いてきて、夢の中を漂ってるみたいだった。そしてなにより、懐かしい雰囲気の中に突如鳴り響くクラフトワークのテクノミュージック「SPACELAB」がとにかくサイコー。「なんでこんなところで!?」って最初はなるんだけど、すぐに「だから良いのか」になるんだよね。 あと、本作を語る上で外してはいけないのが主人公を演じたジョシュ・オコナーの存在! 最近観た『チャレンジャーズ』での印象が強かったせいもあるけど、今回の役にも通じる“報われなさ”があった。 でもこの報われなさは、悲しいものじゃないんだよ。ジョシュ・オコナーの最後の表情にそれが全て詰まってる。あのエンディングを私たちがどう解釈しようと、主人公にとってはあれが最高の幸福のかたちなんだなって思った。彼がずっと探してた過去が、現在と繋がる瞬間にやっと手に入ったしね。
佐藤アーシャマリア