日本独自の進化を遂げた「軟式野球」、「硬式野球」とは異なる競技環境
21世紀に入って減少した競技人口
21世紀に入って野球競技人口が減少に転じた。その背景に「プロ野球の地上波テレビ放送」の激減があったとされるが、他のスポーツの人気の高まりもあって子供世代の「野球人口」も減少した。 また、全国で空き地が減少し、公園でも「球技」が禁止されるなど、子供が「野球遊び」をする空間がなくなったことも大きい。軟式野球用具の売り上げもこの時期から減少した。 日本高等学校野球連盟には硬式野球と、軟式野球の両方の野球部が加盟しているが、その競技人口は、2001年には硬式野球は149,622人だったのが2023年には128,357人と14.3%減少しているのに対し、軟式野球は2001年に12,892人だったのが2023年には7,672人と40.5%も減少している。 日本では軟式野球は、野球の「エントリーレベル」として大きな役割を果たしてきたが、今は「硬球」から入る子供も多く、軟式野球の競技人口は低迷しているのだ。
「軟式」と「硬式」大きく違う競技環境
軟式野球と硬式野球の「競技としての違い」は、端的に言えば「軟式のほうが得点が入り難く、投手戦になりやすい」ということになる。 軟球はバットの芯で打っても飛距離が伸びない。球の弾み方は硬球よりも不規則だが、打球速度が遅いので、捕球しやすい。また打球が当たってもダメージが少ないので、野手が思い切って守る。このために、レベルの高い大会では、投手戦になることが多い。 2014年8月28日、兵庫県明石市のトーカロ球場での第59回全国高校軟式野球選手権大会の準決勝。東海代表の中京(岐阜)と西中国代表の崇徳(広島)の試合は0対0のまま決着がつかず4日間、50イニングを要して勝敗が決まった。 軟式野球界では極端な「投高打低」からの脱却が永年の課題だった。 2002年、全日本野球連盟はスポーツメーカーに「飛距離の伸びる軟式バット」の開発を依頼、これを受けてミズノがFRP本体の打球部にエーテル系発泡ポリウレタンを使用したバット「ビヨンドマックス」を開発した。 現在、進化を重ねた「ビヨンドマックス」シリーズは軟式野球界で爆発的に売れているが、もとは軟式野球界の要請もあって生まれたものだ。 日本高野連は、このほど「飛びすぎる金属バット」を見直したが、軟式野球は正反対の状況になっている。 ボールについても規格改定の際には変形しにくくなる材質にするなど「反発係数」を上げる改定が行われている。