円乱高下は今後起きることの予兆に過ぎず-激しい動き、より頻繁に
29日のドル・円スポット取引高は12兆円、2016年以来の大きさ-CME
根強い円売り圧力の背景には、日銀が3月にマイナス金利政策を解除した後、政策金利が最終的にどの水準に落ち着くかとの見通しがある。
日本が他国に追いつくのは難しいというのがコンセンサスだ。米連邦準備制度が年内に大幅な金融緩和を行うという期待は、力強い米経済と米金融当局者の「より高くより長く」の方針によって打ち砕かれた。
日米の政策金利差は5ポイント余り。債務残高の対国内総生産(GDP)比が250%を超える日本が、米国とのギャップを縮めるのは難しい。また、長年追い求めていた持続的な物価上昇の実現に役立った政策を、すぐには放棄したくないと考える当局者もいるだろう。
円急落は自ら招いた結果、為替介入は当面失敗する公算-ブルックス氏
そのため、日本の金利はより高い他国の金利から投資家を引き寄せるには程遠い水準にとどまり、円相場の反発は短期間で終わると予想するトレーダーの投機的な動きを後押しそうだ。
第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは、「長期的に見れば、円安はおそらく一時的な現象ではないだろう。日本はそういった現実を受け入れる必要があるかもしれない」と述べた。
連邦準備制度が22年に利上げを開始して以来、円相場は大きく下げており、介入は遅きに失したと主張する声もありそうだ。
円安は一般的に日本の輸出企業を助け、インバウンド観光を後押しするが、実質的な物価上昇に賃上げが追いつかず、日本の家計は圧迫されている。過去数十年で最も高いインフレに直面する消費者は支出に不安を感じ、経済への不満が政治に対する不満に拍車をかけている。4月28日投開票の衆院3補欠選挙では自民党が全敗した。
輸入コストが急増し、個人消費の低迷が国内経済の足を引っ張っていることから、当初は通貨安の恩恵を受けていた人々でさえ態度を変えている。
経団連の十倉雅和会長は4月23日、経済のファンダメンタルズ(基礎的諸条件)を踏まえれば、現在の円安は行き過ぎだとの考えを示した。日本航空(JAL)の鳥取三津子社長も同月24日、円安が止まらない足元の状況について「かなり懸念」しているとし、1ドル=130円程度の水準が望ましいとの考えを示した。