新会館のこけら落とし 佐藤天九段が中村八段に快勝で挑戦に前進 第83期順位戦A級7回戦
第83期順位戦A級(主催:朝日新聞社・毎日新聞社・日本将棋連盟)は7回戦がスタート。1月7日(火)には佐藤天彦九段―中村太地八段の一戦が東京・将棋会館で行われました。対局の結果、得意の振り飛車を用いて混戦の中盤を抜け出した佐藤九段が132手で勝利。快勝で挑戦権獲得に向け一歩リードしました。 ■まっさらな特別対局室で 佐藤九段4勝2敗、中村八段3勝3敗で迎えた本局は順位戦終盤の山場。全勝者・全敗者がおらず、全員が2敗以上となっている今期のA級は挑戦権争いが熾烈を極めます。新将棋会館のこけら落としとなった本局は、後手となった佐藤九段が角交換振り飛車を採用。駆け引きのすえ角を自陣に打ち合うクラシカルな対抗形に落ち着きました。 先手の中村八段が右銀を繰り出して急戦を仕掛けたとき、左金を飛車の方に上がったのが佐藤九段らしい受け方。金の厚みで戦いを長期化させるのは大師匠の大山康晴十五世名人を彷彿とさせる指し回しで、この手を境に指し手の勢いは徐々に振り飛車側に振れ始めました。攻める立場の中村八段ですが、この手の直後に3時間近くの大長考を強いられます。 ■全振り飛車党必修の快勝譜 受けを基調にペースをつかんだ佐藤九段は緩急自在の指し回しでリードを広げます。馬を自陣に引き付けて受けに回ると思わせつつ、機を見てこの馬を切り飛ばしたのが好手順。先手が攻めるには嫌でも後手の左金を相手にするよりなく、これを取らせることによって終盤の貴重な一手を稼げるというのが佐藤九段の遠大な伏線回収でした。 終局時刻は翌8日0時44分、自玉の受けなしを認めた中村八段が投了。難しいところはありつつも、最後は攻め合いの局面から一転して受けに回った佐藤九段が先手の戦力切れを誘った快勝譜となりました。これで勝った佐藤九段は5勝2敗と挑戦に向け一歩リード、敗れた中村八段は3勝4敗の星取りとなっています。 水留啓(将棋情報局)
将棋情報局